「民泊投資は儲かるらしい」と聞いて調べ始めた方に、最初にお伝えしたいことがあります。民泊投資は、不動産投資というより「宿泊事業」に近いということです。賃貸経営のように契約さえ結べば毎月家賃が入る仕組みではなく、1日ずつ予約を積み上げて売上を作ります。つまり、継続的に集客できるかどうかが結果を大きく左右するのです。
私たちTABILMOは一棟貸し専門のOTA(オンライン旅行代理店)として、多くの施設の掲載データを見てきました。その経験から言えることを交えて、詳しく紹介していきます。
この記事で分かることは、次の3点です。
- 不動産投資との違い: 何が同じで、何が決定的に違うのか
- リスクと向き不向き: 「やばい」と言われる5つのリスクと、向いていない人の条件
- 始め方: 何から順に決めればよいか
民泊経営そのものの全体像は民泊経営の全体像もあわせてご覧ください。
民泊投資とは?普通の不動産投資(賃貸経営)と何が違うのか
民泊投資とは、購入または賃借した物件を宿泊施設として運用し、宿泊料から収益を得る事業です。同じ「不動産を使って稼ぐ」でも、賃貸経営とは性質がかなり異なります。
| 賃貸経営(不動産投資) | 民泊投資 | |
|---|---|---|
| 収入源 | 家賃(契約に基づく固定収入) | 宿泊料(日々の予約の積み上げ) |
| 収益の変動 | 小さい(入居中は安定) | 大きい(季節・曜日・イベントで変動) |
| リスクの形 | 空室リスク | 稼働率リスク |
| 手間 | 少ない(管理会社に委託可能) | 多い(予約対応・清掃・価格調整)※委託も可 |
| 規制 | 借地借家法など | 民泊新法・旅館業法・条例など |
| 収益の上げ方 | 家賃を上げる | 稼働率と単価を上げる |
最大の違いは、「空室」の単位が月ではなく日であることです。賃貸なら入居者が決まれば数年単位で収入が安定しますが、民泊は毎日が空室判定です。その代わり、繁忙期には賃貸の数倍の単価を取れる場合もあります。
この構造は、リスクでもありチャンスでもあります。放っておけば収入が積み上がる仕組みではない代わりに、運用の工夫が売上に直結するからです。「不動産投資(賃貸)の延長」と考えて始めると、そのギャップに戸惑うことになります。
民泊投資の利回りはどう考える?(数値を鵜呑みにしない)
利回りは民泊投資でもっとも誤解が生まれやすい部分で、ネット上の「平均利回り◯%」を自分の物件に当てはめるのは危険です。エリア・物件・稼働率・運営形態で大きく変わるため、相場を探すよりも自分の条件で計算できるようになるほうが確実です。
利回りの計算式
まず、2つの利回りを区別します。
| 計算式 | 何が分かるか | |
|---|---|---|
| 表面利回り | 年間売上 ÷ 物件取得費 | 見出しの数字。経費が入っていない |
| 実質利回り | (年間売上 − 年間経費)÷(物件取得費 + 初期費用) | 実際に手元に残る収益力 |
そして、民泊の年間売上はこのように分解して考えることができます。
年間売上 = 宿泊単価 × 稼働率 × 営業可能日数
この式が、民泊投資の性格をよく表しています。単価を上げても、埋まらなければ売上にはなりません。そして民泊新法で運営する場合、営業可能日数には180日という上限があります。3つの変数のうち2つは自分で動かせますが、1つは法律で決まっている。これが民泊投資の構造です。
見落とされやすい経費
実質利回りを出すには、経費を漏れなく拾う必要があります。民泊の経費は、売上に比例して増えるものと、稼働に関係なく固定でかかるものに分けて考えると整理しやすいです。
| 種類 | 主な費目 |
|---|---|
| 売上に比例して増える | 清掃費(宿泊のたびに発生)、OTA(予約サイト)の手数料、消耗品・アメニティ費、運営代行の手数料(売上連動の場合) |
| 稼働に関係なくかかる | 光熱費・通信費の基本料、保険料、固定資産税、ローン返済 |
賃貸経営の感覚で「家賃収入 − ローン返済」だけを見ていると、実態と大きくずれてしまいます。特に、何も考えていないと清掃費とOTA手数料は稼働が増えるほど比例して増えるため、「満室なら儲かる」という単純な計算は成り立ちづらいです。
自分の目安を出す手順
相場を探すのではなく、次の順で自分の数字を作ってみてください。
- 近隣の類似施設が、実際にいくらで、どれくらい埋まっているかを予約サイトで調べる
- その単価と稼働率で、年間売上を上の式に当てはめる(民泊新法なら日数上限は180日)
- 上の表の経費をすべて引く
- 物件取得費と初期費用で割る
この4ステップで出た数字が、あなたの物件の実質利回りの出発点です。稼働率の考え方は民泊の稼働率の目安と上げ方、具体的な収支の組み立て方(想定売上・経費)は民泊の収益シミュレーションで数字を追いながら解説しています。
なお、減価償却や確定申告の扱いは物件の取得方法や規模で変わります。税務は自己判断せず、税理士に確認しておくと安心です。
民泊投資はやばい?先に知るべき5つのリスク

民泊投資について調べていると、「やばい」「やめとけ」という声に突き当たります。これは誇張ではなく、実際に無視できないリスクが存在するからです。夢と期待をふくらませるよりも先に、この5つを押さえておきましょう。
リスク①: 180日規制で稼働日数に上限がある
住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出をして運営する場合、宿泊者に提供できる日数は年間180日以内に制限されます。365日フル稼働を前提に収支を組むと、計画が根本から崩れます。
さらに、自治体の上乗せ条例によって、営業できる区域や期間がさらに狭められている場合があります。物件を決める前に、所在地の条例を確認しておきましょう。180日ルールの詳細は民泊新法(住宅宿泊事業法)の180日ルールで解説しています。
なお、旅館業法(簡易宿所)の許可を取れば営業日数の制限はなくなりますが、その代わり用途地域や設備の要件が厳しくなります。どちらを選ぶかは投資計画の根幹に関わってきます。
リスク②: 供給が増え、稼働と単価が下がる可能性
民泊の供給は増え続けています。観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」によると、稼働中の届出住宅数は2026年5月時点で40,745件。同年3月時点の39,575件から、2か月で1,170件増えました。
供給が増えれば、同じエリアで似た施設が競合し、稼働率と単価の両方に下押し圧力がかかります。「今の相場」で計算した収支が、数年後も成り立つとは限らないという前提を持っておきましょう。
リスク③: 法改正・条例変更のリスク
民泊は法規制の影響を強く受ける事業です。国の法律だけでなく、自治体の条例によっても営業条件が変わります。住居専用地域での営業日数などを条例で独自に制限している自治体もあります。
条例は自治体ごとに異なるため、検討中の物件があるなら、その市区町村の民泊担当窓口に直接問い合わせるのが確実です。自治体の公式サイトに民泊制度のページが用意されていることも多く、そこから最新の条例と届出の手引きを確認できます。
投資の観点で怖いのは、物件を取得した後にルールが変わる可能性です。制度変更に対して、旅館業法への切り替えなど代替手段が取れる物件かどうかは、購入前に考えておく価値があります。
リスク④: 近隣トラブル・クレーム
騒音、ゴミ出し、見知らぬ人の出入りなど、民泊は近隣住民との摩擦が起きやすい事業です。トラブルが深刻化すると、行政指導や営業継続の困難につながることもあります。
特に集合住宅や住宅密集地では、事前の説明と運用ルールの整備は欠かせないものです。起きやすいトラブルと対策は民泊で起きやすいトラブル事例と対策にまとめています。近隣対応を軽視した施設が、その後の運営で苦しむケースは少なくありません。
リスク⑤: 出口(売却)が読みにくい
民泊物件は、一般の居住用不動産と比べて買い手が限られる傾向があります。「民泊として運営できる物件」という条件が、そのまま売却時の制約にもなり得るためです。
また、収益物件として売る場合、その時点の稼働実績が価格に影響します。売りたいタイミングで、想定どおりの価格で売れるとは限らないという前提で、資金計画には余裕を持たせておくのが安全です。
民泊投資に向いている人・向いていない人

ここまでのリスクを踏まえると、民泊投資が向く人と向かない人ははっきり分かれます。
向いている人
- 運用に関与できる人: 予約対応・価格調整・写真の改善などに手を動かせる(または信頼できる民泊代行にお願いできる)
- 一棟・戸建てで始められる人: 管理規約の制約が少なく、一棟貸しは単価も取りやすい
- 観光・通勤需要のあるエリアに物件がある人: 稼働率の土台が違う
- コンセプトで差別化する発想がある人: 「泊まる理由」を作れる施設は価格競争から抜けられる
- 中長期で取り組める人: 立ち上げからレビューが貯まるまでには時間がかかる
向いていない人
- 完全放置の不労所得を期待する人: 民泊は宿泊事業です。手離れの良さを最優先するなら賃貸経営のほうが合っています
- 短期間での資金回収を狙う人: 初期投資の回収には相応の期間がかかります
- 区分マンション(投資用マンション)で考えている人: 分譲マンションは管理規約で民泊を禁止しているケースが多く、規約変更のハードルも高いのが実情です(詳しくは下記)
- 借入を目一杯にして始める人: 稼働が読みにくい事業で返済余力がないのは危険です
補足: 投資用マンションを検討している方へ
区分マンションでの民泊は、多くの場合そもそも管理規約で禁止されています。国土交通省が示す「マンション標準管理規約」も、2017年の改正で民泊を禁止する条項を選択できる形になりました。規約で認められていなければ営業はできず、規約を変更するには区分所有者の合意が必要で、実現のハードルは高くなります。
投資用マンションで検討している方は、購入前に管理規約を確認することが欠かせません。制約の少なさという点では、一棟の戸建てのほうが民泊には向いています。
自分がどちらに当てはまるか判断がつかない場合は、経験者に直接聞いてみるのが早道です。TABILMOの運営会社代表による無料の民泊開業相談もご活用いただけます。
民泊投資の始め方4ステップ
進めると決めたら、次の順序で検討していきます。
ステップ①: 法的枠組みを選ぶ
選択肢は3つあります。
- 民泊新法(届出制・年間180日まで・住居専用地域でも可)
- 旅館業法の簡易宿所(許可制・営業日数の制限なし・用途地域の制約あり)
- 特区民泊(認定制・国家戦略特区の指定エリア限定・最低宿泊日数などの条件あり)
どの枠組みで運営するかによって、選ぶべき物件が変わります。ここを決めずに物件を探すと、買った後で「この物件では希望する形態が取れない」という事態になりかねません。3つの違いは民泊新法・旅館業法・特区民泊の違いで比較しています。
ステップ②: 物件を選ぶ・確保する
枠組みが決まったら、条件に合う物件を探します。用途地域、建物の構造、消防設備の要否、賃貸なら転貸の承諾——確認事項は多岐にわたります。物件の探し方と確認ポイントは民泊物件の探し方で解説しています。
投資判断としては、「利回りが高そうな物件」より「稼働させられる物件」を選ぶことが重要です。安く買えたとしてもゲストが泊まりに来ない立地では、投資は成立しません。
ステップ③: 資金計画を立てる
物件取得費のほかに、リノベーション費、家具・家電、消防設備、初期の運転資金が必要です。融資を使う場合は、民泊での利用が認められるローンかどうかを金融機関に確認することが欠かせません。住宅ローンは契約者本人が住むことを前提とした商品のため、民泊に使うと契約違反となる可能性があります。使える融資の種類と注意点は民泊で使える融資・ローンにまとめています。
なお、稼働が読みにくい事業である以上、返済に余裕を持たせた資金計画にしておくと安心です。
ステップ④: 運用・集客の体制を作る
自主運営するか、運営代行に委託するかを決めます。委託すれば手間は減りますが、手数料の分だけ利回りは下がります。どちらを選ぶにせよ、「どうやって埋めるか」の設計だけは自分で理解しておくべきです。
結局、投資の成否を分けるのは「運用」— OTA視点の実感
一棟貸し専門OTAとして多くの施設の掲載データを見てきて痛感するのは、同じようなエリア・同じような間取りでも、予約が埋まる施設とほとんど埋まらない施設がはっきり分かれるという事実です。差がついているのは、物件のスペックではありません。
分かれ目になっているのは、主に次の2つです。
1つは、コンセプトが定まっているか。 「誰に、何を、どう違うか」が明確な施設は、写真の一覧に並んだときに選ばれます。逆に「きれいだが特徴のない部屋」は、価格でしか比較されません。考え方は民泊のコンセプトの決め方にまとめています。
もう1つは、掲載先が合っているか。 一棟貸しの魅力が伝わらない場所に載せていても、良さは届きません。掲載先ごとの特徴は民泊・一棟貸しの集客サイト比較で比較しています。
投資として成立させる最後のピースは、結局「埋めること」です。TABILMOは一棟貸しに特化したOTAとして、一棟まるごと借りたいゲストに施設を届けています。掲載を検討される方は、あわせてご覧ください。
よくある質問
民泊投資の利回りはどれくらいですか?
一律の目安をお伝えするのは避けます。エリア・物件価格・稼働率・運営形態(自主運営か代行か)で、結果が大きく変わるためです。ネット上の「平均利回り」をそのまま自分の物件に当てはめるのは危険です。本記事の「利回りの計算式」と「自分の目安を出す手順」を使って、表面利回りではなく、清掃費・OTA手数料・光熱費・代行手数料を引いた実質ベースで試算してみましょう。
民泊投資はやめたほうがいいですか?
「誰にとっても危険」な投資でも「誰でも儲かる」投資でもありません。判断軸は、運用に関与できるかどうかです。手離れの良さを求めるなら賃貸経営のほうが向いています。一方、稼働率や単価を自分で改善していける方にとっては、賃貸にはない収益の伸びしろがあります。180日規制・供給増・条例変更のリスクを理解したうえで判断するのが賢明です。
サラリーマンでも民泊投資はできますか?
可能です。ただし、予約対応や清掃手配は日常的に発生するため、本業と両立するなら運営代行の活用が現実的です。その場合は手数料が利回りを圧迫する点を、初めから収支に織り込んでおきましょう。あわせて、勤務先の副業規定も確認しておくと安心です。
投資用のマンション(区分)でも民泊はできますか?
分譲マンションは、管理規約で民泊を禁止しているケースが多いのが実情です。規約で認められていない場合、規約変更には区分所有者の合意が必要でハードルは高くなります。購入前に管理規約を確認することが欠かせません。制約の少なさという点では、一棟の戸建てのほうが民泊には向いています。
まとめ
民泊投資は、不動産投資というより宿泊事業です。家賃のように自動では入らず、稼働率を作れるかどうかで結果が決まります。
先に押さえるべきリスクは5つ。180日規制・供給増による下押し・法改正/条例・近隣トラブル・出口の読みにくさ。これらを理解したうえで、運用に関われるなら、賃貸経営にはない収益の伸びしろがあります。逆に、完全放置の不労所得を期待するなら、この事業は向いていません。
進めるなら、「①法的枠組みを決める → ②枠組みに合う物件を選ぶ → ③資金計画を立てる → ④運用・集客の体制を作る」の順です。そこで効いてくるのがコンセプトと掲載先、つまり「どうやって予約を埋めるか」の設計です。
一棟貸し専門予約サイトTABILMO(タビルモ)は、戸建てや古民家などの一棟貸し民泊におすすめのOTAです。掲載すると大手OTAではアプローチしづらい、一棟貸しを探すゲストに直接施設を届けることができるようになります。