「自分の民泊、稼働率はこのままでいいのだろうか」「そもそも稼働率の平均ってどれくらいなのか」。運営を始めると、多くのオーナーがこの2つの疑問に行き当たります。
この記事では、まず公的データから民泊の平均稼働率の目安をまとめ、その次に自施設の稼働率の計算方法と、低いときの原因の切り分け方、値下げに頼らず稼働を上げる具体策までを順に解説。一棟貸し専門のOTAであるタビルモが、実際の予約現場で見えてくる視点も交えてまとめます。
民泊の稼働率とは

稼働率(客室稼働率・OCC=Occupancy Rate)とは、「宿泊可能日(または部屋数)のうち、実際に予約で埋まった日の割合」を指します。宿泊施設が「どれくらい稼働しているか」「どれだけ売れているか」を示す、もっとも基本的な指標です。
ただし、稼働率は単独で見る指標というよりも、ADR(平均客室単価)とRevPAR(稼働率×ADR)をあわせた3つの指標をセットで見ます。
| 指標 | 意味 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 稼働率(OCC) | 埋まった日数の割合 | どれだけ「売れているか」。ただし安売りでも上がる |
| ADR (平均客室単価) | 1泊あたりの平均販売価格 | どれだけ「高く売れているか」 |
| RevPAR (稼働率×ADR) | 1室あたりの売上 | 稼働と単価を合わせた「本当の収益力」 |
稼働率だけを追うと、値下げで数字は上がっても収益は落ちる、という落とし穴にはまります。
この記事の最後で、稼働率とADR・RevPARをどう両立させるかを解説します。先に料金設計の全体像を知りたい方はブッキングカーブとレベニューマネジメントも参考にしてください。
民泊の平均稼働率はどれくらい?

「平均」と一口に言っても、どの統計を見るかで数字は大きく変わります。ここでは、代表的な公的データを2つ見ていきましょう。
① 宿泊施設全体の客室稼働率(観光庁・宿泊旅行統計調査)
観光庁が毎月公表している「宿泊旅行統計調査」では、施設タイプ別の客室稼働率がわかります。民泊にもっとも近いのは、旅館業法の簡易宿所営業で許可を取った施設が含まれる「簡易宿所」の区分です。
| 施設タイプ | 2024年(確定値) | 2025年(速報値) |
|---|---|---|
| 全体 | 59.6% | 61.8% |
| シティホテル | 72.3% | 74.2% |
| ビジネスホテル | 73.7% | 75.3% |
| リゾートホテル | 54.1% | 56.9% |
| 旅館 | 36.1% | 38.4% |
| 簡易宿所 (民泊に近い区分) | 29.0% | 29.6% |
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値(速報値))」。2024年は確定値、2025年は第2次速報値。施設タイプにより調査対象・算出方法が異なります。
【抑えるべき2つのポイント】
- ビジネスホテルやシティホテルの数字(70%台)をそのまま民泊の目標にしないこと。駅前などの典型的な立地で出張・観光需要を取り込む都市型ホテルと、エリアや日程が限られる民泊・一棟貸しでは、稼働率の構造がそもそも異なります。
- 民泊に近い「簡易宿所」は約30%だという事実。施設全体の平均(約6割)の半分以下で、これが「民泊は毎日埋まる商売ではない」という実態を端的に表しています。稼働率が「平均6割」という数字を基準にして落ち込む必要はありません。より営業形態の実態が近しい、旅館(約38%)や簡易宿所(約30%)の水準と比較しましょう。
② 民泊(住宅宿泊事業)に絞った稼働の実態
住宅宿泊事業法(民泊新法)にもとづく届出住宅については、観光庁が「住宅宿泊事業の宿泊実績」として、届出住宅1軒あたりの宿泊日数を公表しています。住宅宿泊事業者は2か月ごとに宿泊日数などを報告する義務があり、その集計値です。
直近の集計(2026年2月1日~3月31日)では、届出住宅1軒あたりの宿泊日数は17.2日でした。これは2か月(約59日)あたりの数字なので、1か月に均すと実際に宿泊があったのは9日前後という計算になります。
つまり、民泊新法の届出住宅を平均すると、宿泊日数ベースの実質的な稼働は月のおよそ3割というのが実態です。先ほどの簡易宿所の稼働率(約30%)ともほぼ一致します。「民泊は毎日埋まる商売」ではない、という前提を持っておくことが重要です。なお、この数字は季節限定で動かしている物件や、年間180日の営業上限がある届出住宅も含めた平均であり、稼働の高い物件と、ほとんど動いていない物件が混在した結果である点には注意してください。
出典:観光庁「住宅宿泊事業の宿泊実績(令和8年2月-令和8年3月分)」(2026年5月29日公表)。届出住宅数40,585・報告率82.9%。
結局、自分の施設は何%を目指せばいい?
立地・営業形態によって現実的なラインは変わりますが、一棟貸しや地方の民泊では、年間を通して見たときに稼働率30〜50%が一つの目安になります。週末・連休・繁忙期(桜・紅葉・夏休みなど)に予約を集中させ、平日と閑散期をどう底上げするかが勝負になります。
なお、稼働率は地域差が非常に大きい点にも注意が必要です。インバウンド需要の厚い都市部・有名観光地と、需要が週末や特定シーズンに偏る地方とでは、同じ「民泊」でも稼働の構造がまったく異なります。他エリアの平均値をそのまま自施設の基準にせず、近隣の競合施設の料金・空室状況を実際に確認して目安にするのがおすすめです。地域別・物件タイプ別の収益の考え方は民泊の収益シミュレーションで詳しく扱っています。
稼働率の計算方法

自施設の稼働率は、次の式で計算します。
稼働率(%)= 予約が入った日数 ÷ 営業可能だった日数 × 100
たとえば、ある月(30日)のうち営業可能日が30日で、12日分の予約が入っていれば、稼働率は「12 ÷ 30 × 100 = 40%」です。計算自体は単純ですが、民泊では次の2点でつまずきやすいので注意してください。
注意① 民泊新法は「分母」の取り方に注意
住宅宿泊事業法(民泊新法)で運営している場合、年間の営業可能日数は180日が上限です。年間365日を分母にして稼働率を計算すると実態より低く見えてしまうため、「営業した(できる)日数」を分母にして考えるべきです。一方で、旅館業法の許可で運営している場合は営業日数の上限がないため、365日が分母になります。許可区分ごとの違いは民泊新法の180日ルールも参考にしてください。
注意② 「予約が入った日数」と「実際に泊まった日数」は違う
予約が入っていても、直前キャンセルで結局その日が空室になることがあります。OTAの管理画面上の予約ベースの稼働率と、実際に売上が立った稼働率はズレることがある、と理解しておきましょう。キャンセルが稼働率に与える影響については後述します。
稼働率が低いときに見るべき5つのポイント

「稼働率が上がらないから、とりあえず値下げ」は、もっとも避けたい短絡的な選択です。稼働率は、予約が成立するまでの流れのどこかが詰まっている結果として下がります。予約フローを順番に切り分けると、どこを直せばいいかが見えてきます。
①検索で表示される → ②一覧でクリックされる → ③施設ページで予約される → ④キャンセルされない → 稼働率
① そもそも検索結果に表示されているか(露出)
OTA内の検索結果に自施設が表示されていなければ、予約は始まりません。掲載先が1つだけだと、その媒体を使わないゲストには存在しないのと同じです。販売チャネル(掲載先)の数は、露出の総量に直結します。施設が他施設のなかで埋もれてしまわないように、大手予約OTAだけではなく一棟貸し専門OTAタビルモなどの特化型サイトへの掲載も検討しましょう。
② 一覧からクリックされているか(1枚目の写真)
検索結果の一覧でゲストが最初に見るのはサムネイル(1枚目の写真)です。ここでクリックされなければ、どれだけ中身が良くても予約には至りません。1枚目に何を持ってくるか、明るさや構図が適切かを見直します。
③ 施設ページで予約に至っているか(転換率)
クリックされて施設ページまで来ているのに予約されない場合は、ページの中身に原因があります。説明文が薄い、料金が割高に見える、最低宿泊日数の設定が需要と合っていない、などです。とくに最低宿泊数(連泊縛り)が需要に対して長すぎると、短期需要を丸ごと取り逃します。
④ 料金・在庫の設定は適切か
曜日や季節での需要変動を無視した一律料金の設定は、繁忙期は取りこぼし、閑散期は割高で売れ残る、という二重の損失を生みます。需要に応じて価格を動かす考え方はダイナミックプライシング導入の手順で解説しています。適正な料金水準そのものを知りたい場合は民泊の料金相場と適正料金の決め方を参考にしてください。
⑤ キャンセルで稼働が落ちていないか
予約は取れているのに、直前キャンセルで結局空室になっている、というパターンです。キャンセルポリシーが緩すぎると、仮押さえ的な予約で在庫が塞がれ、本来取れたはずの予約を逃してしまう場合があります。タビルモが実際の一棟貸し予約データをもとにキャンセルの傾向を分析した90日前キャンセル率データなどを参考に、適切なポリシー設計をすすめましょう。
稼働率を上げる具体策
原因の切り分けができたら、具体的な対応策を考えて実施しましょう。ここでは効果が大きい順に整理します。
販売チャネルを増やして露出を底上げする
もっとも即効性があるのが、掲載先(OTA)を増やすことです。1つの媒体だけに掲載している状態では、その媒体を使わない層の予約をまるごと取り逃してしまいます。複数のOTAに掲載すれば、それだけ多くのゲストの検索結果に表示され、予約の母数が増えます。
とくに一棟貸し・貸別荘のように特徴がはっきりした物件は、その予約したい層が集まる専門の媒体に載せることで、価格競争に巻き込まれがちな大手OTAよりも効率よく予約につながります。掲載先の選び方は民泊集客サイトの比較でまとめています。
閑散期・平日の稼働を埋める
稼働率を押し上げるうえで効果的なのが、閑散期・平日対策です。繁忙期はそのままでも埋まることが多いので、伸びしろは平日と閑散期にあります。具体的には、連泊割引で滞在日数を伸ばしたり、最低宿泊数を閑散期だけ緩めたり、平日限定プランを用意したりする、といった対策があります。料金を一律にせず、需要の薄い日の宿泊料金を意図的に動かすのがポイントです。
写真と施設ページを磨く
露出を増やしても、クリック率と予約転換率が低ければ稼働は伸びません。1枚目の写真の差し替え、季節に合わせた写真の入れ替え、説明文の充実は、追加コストがほぼかからないわりに効果が出やすい施策です。実際に変更する際は、可能であれば現時点の予約転換率等を計測し、施策の効果が出たかどうか数値でわかるようにします。
キャンセルポリシーを見直す
緩すぎるキャンセルポリシーは、仮押さえ予約の増加や在庫の空回りを生みます。物件の需要やリードタイムに合わせて、適切な厳しさに調整しましょう。
稼働率だけで判断しない(ADR・RevPARも見る)

最後に、もっとも重要な注意点です。稼働率は、値下げすれば比較的簡単に上がります。しかしそれは「安く叩き売って埋めた」だけで、収益が増えるとは限りません。
たとえば、1泊2万円で稼働率40%の施設と、1泊1.2万円に下げて稼働率60%にした施設を比べてみます。
| 値下げ前 | 値下げ後 | |
|---|---|---|
| ADR(1泊単価) | 20,000円 | 12,000円 |
| 稼働率 | 40% | 60% |
| RevPAR(1室あたり売上) | 8,000円 | 7,200円 |
※RevPAR = ADR × 稼働率。上記は計算例です。
稼働率は40%→60%に上がったのに、1室あたりの売上(RevPAR)はむしろ下がっています。稼働率・ADR・RevPARはセットで見る——これが、稼働率を追ううえでの大原則です。
値下げ以外の方法(露出拡大・写真改善・閑散期対策)で稼働を上げることが、収益を伸ばす近道になります。レベニューマネジメントの考え方はブッキングカーブとレベニューマネジメント、収益全体の設計は民泊経営ガイドで詳しく解説しているのでご覧ください。
まとめ
民泊の稼働率は、「平均6割」という宿泊施設全体の数字にとらわれず、民泊・一棟貸しの実態に近い水準をもとに考えることが出発点です。そのうえで稼働が伸び悩むときは、安直に値下げに走る前に原因を順番に切り分け、収益とのバランスを見ながら手を打っていくのが基本になります。
最後に今回の要点をまとめました。
- 宿泊施設全体の客室稼働率は約6割だが、民泊・一棟貸しはエリアや日程が限られるため、より低いのが普通。年間ならして30〜50%が現実的な目安。
- 稼働率は「予約日数 ÷ 営業可能日数」。民泊新法では分母(営業日数)の取り方に注意する。
- 稼働が低いときは値下げの前に、露出 → クリック → 転換 → キャンセルの順で原因を切り分ける。
- もっとも即効性があるのは掲載チャネルを増やすこと。次いで閑散期対策・写真改善。
- 稼働率だけを追わず、ADR・RevPARとセットで判断する。
掲載チャネルを増やして稼働率を底上げしたい方へ。
タビルモは一棟貸し・貸別荘に特化したOTAです。既存のOTAと併用することで、物件の特徴を求めているゲストに直接リーチでき、稼働率の底上げが期待できます。