「民泊できない」を防ぐ用途地域ガイド|種類や制限緩和の動向・またがる場合も解説

  • 2025年10月24日
  • 2025年11月11日
  • 民泊

「この古民家、雰囲気も良くて貸別荘にぴったりだ。でも、本当にここで営業できるんだろうか…」

「用途地域のせいで、開業許可が下りなかったらどうしよう…」
「民泊物件を建てたいけど、どこなら民泊の運営ができるだろう…」

民泊・貸別荘運営を考えるオーナー様にとって、「用途地域」は避けては通れない、大きな壁の一つです。1軒目の開業時にその複雑さを痛感し、2軒目こそは絶対に失敗したくない、と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ご安心ください。

  • 全13種類の用途地域で、民泊・貸別荘が「できる・できない」が一目でわかる

  • ご自身の物件の用途地域を、誰でも迷わず調べられる具体的な3ステップ

  • 「土地が2つの地域にまたがる」「最新の規制緩和ってどうなってるの?」といった特殊ケースの対処方法

複雑に見える用途地域も、ポイントさえ押さえれば大丈夫です。この記事を最後まで読めば、物件選びの失敗を防ぎつつ、次の一歩を踏み出せるはずです。

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そもそも「用途地域」とは?なぜこれほど重要なのか

用途地域とは、一言でいえば、街を快適で機能的にするための、土地の使い分けルールのことです。

日本の都市計画法に基づいて、全国の都市が「ここは静かな住宅街にしよう」「ここは商業施設を集めて賑やかにしよう」「ここは工場地帯にしよう」といったゾーニング(区域分け)を行っています。

このルールが民泊・貸別荘運営において死活問題となるほど重要なのは、宿泊施設もこのゾーニング・ルールの対象だからです。

もし、このルールを知らずに物件の購入や賃貸契約を進めてしまうと、事業の根幹を揺るがす深刻な事態に陥りかねません。

【用途地域を無視した失敗例】
多額の初期投資をしたのに、保健所や自治体から営業許可が全く下りない
金融機関の融資審査で「事業計画に重大な欠陥あり」と見なされ、融資を断られる
悪質なケースでは、違法運営として営業停止命令や罰則の対象となる

特に、民泊新法(住宅宿泊事業法)ではなく、旅館業法(簡易宿所営業)での運営を目指す場合、この用途地域の制限はさらに厳しくなります

用途地域の確認は、単なる手続きの一つではありません。あなたの貴重な時間と資金を守り、事業を成功させるための「重要なリスク管理」の一つなのです。

【完全網羅】全13種類の用途地域と民泊・貸別荘の可否を徹底解説

 

用途地域は、大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分類され、さらに細かく13種類に分かれています。

ここでは、それぞれの地域で「民泊新法」と「旅館業法(簡易宿所)」の運営が可能かどうかを一覧表で解説します。さらに、特にオーナー様が迷いやすい地域については、その背景や注意点を深掘りしていきます。

用途地域別:民泊の運営可否一覧表

用途地域地域のイメージ民泊新法旅館業法オーナー向けワンポイント解説
【住居系】    
第一種低層住居専用地域閑静な高級住宅街×最も厳しい地域。旅館業法は不可。民泊新法も自治体の厳しい上乗せ条例(週末のみ営業可など)に要注意。
第二種低層住居専用地域小中学校などがある住宅街×第一種と同様に厳しい。コンビニ等も建てられるが、宿泊施設の営業は原則NG。
第一種中高層住居専用地域3〜5階建てのマンションが中心×民泊新法は可能だが、マンションの管理規約で禁止されているケースが多いため、規約の確認が必須。
第二種中高層住居専用地域中規模のスーパーや病院もあるマンション街ここから旅館業法が可能に。ただし延床面積3,000㎡以下という制限あり。
第一種住居地域大規模な店舗や事務所はNGな住宅街第二種中高層と同様、延床面積3,000㎡以下の制限あり。
第二種住居地域パチンコ店なども建てられる賑やかな住宅街面積制限なく旅館業法が可能。住宅地でありながら事業展開しやすい。
準住居地域幹線道路沿いで自動車関連施設もOK第二種住居地域とほぼ同様の条件で運営可能。ロードサイド物件などが該当。
田園住居地域農地と住宅が共存するエリア比較的新しい用途地域。古民家活用などで注目されるが、周囲の環境への配慮が不可欠。
【商業系】    
近隣商業地域住民向けの商店街最もバランスが良い地域の一つ。住民の利便性と事業のしやすさを両立。
商業地域都心部のターミナル駅周辺など最も規制が緩やかな地域。ただし物件価格や賃料が高い傾向にある。
【工業系】    
準工業地域軽工業の工場や住宅が混在意外な穴場。工場の跡地をリノベーションしたユニークな施設なども可能。
工業地域本格的な工場が立ち並ぶエリア×住宅の建設が可能なため民泊新法は可能だが、宿泊ニーズや周辺環境は要検討。
工業専用地域湾岸部などの大規模工場地帯××住宅建設が禁止のため、宿泊施設の運営は一切不可。

※出典:国土交通省「用途地域による建築物の用途制限の概要」を基に作成。上記は一般的な法令に基づくものであり、詳細は必ず各自治体の条例をご確認ください。

深掘り解説:オーナーが特に注意すべき3つの地域

第一種・第二種低層住居専用地域(低層ゾーン)

このエリアは、徹底して「良好な住環境」を守ることを目的としています。そのため、不特定多数の人が出入りする宿泊施設の運営には最も厳しい目が向けられます。旅館業法での運営は法律上できません民泊新法は可能ですが、京都市のように「営業は冬場の約2ヶ月間のみ」といった、事業として成り立たせるのが困難なほど厳しい「上乗せ条例」を定めている自治体も少なくありません。もしこのエリアで物件を検討する場合は、役所への確認が生命線となります。

第二種住居地域・準住居地域(ミドルゾーン)

2軒目以降の運営や、旅館業法への切り替えを検討しているオーナー様にとって、非常に魅力的なのがこのエリアです。住宅地としての落ち着きを保ちつつ、面積制限なく旅館業(簡易宿所)の運営が可能です。スーパーや飲食店も近くにあることが多く、宿泊者の利便性も高いため、安定した集客が見込めます。競合も多くなりますが、戦略的に狙う価値のあるエリアと言えるでしょう。

商業地域(都心ゾーン)

ターミナル駅の周辺など、まさに「街の中心部」です。規制は最も緩やかで、あらゆるタイプの宿泊施設が運営可能です。集客力は抜群ですが、その分、土地や建物の価格・賃料が非常に高くなります。高い固定費を賄えるだけの高単価・高稼働を実現できる、差別化されたコンセプトと運営戦略が不可欠となります。

 

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【画像でナビゲート】3ステップで簡単!自分の物件の用途地域を調べる方法

用途地域で色分けされている

用途地域はPCやスマホがあれば、5分で調査可能です。以下の3ステップに沿って進めてみましょう。

Step1:物件の「住所(住居表示)」または「地番」を準備する

まず、調べたい物件の正確な所在地情報を手元に準備します。

  • 住所(住居表示: 「〇〇市△△町1丁目2番3号」のような、一般的な住所です。

  • 地番: 登記簿謄本(全部事項証明書)に記載されている土地の番号です。

どちらでも検索できますが、より正確なのは「地番」です。特に、新築や広い土地の場合は地番で確認しましょう。

Step2:自治体のWebサイトで「都市計画情報サービス」を探す

次に、Googleなどで「〇〇市(区町村名) 用途地域 マップ」「〇〇市 都市計画情報」と検索します。

すると、多くの自治体で以下のようなサービスが提供されています。

  • 都市計画図: 市全体の地図が色分けされたファイル。エリアの全体像を把握するのに便利です。

  • GIS(地理情報システム: 住所や目標物を入力すると、地図上でピンポイントにその場所の用途地域を表示してくれるWebサービス。非常に便利で、最近の主流です。基本的には「住所を入力」→「検索」→「用途地域が表示される」という流れで確認できます。

表示された地図上で、物件の位置が何色で塗られているかを確認します。地図には必ず「凡例(はんれい)」があり、「(赤色):商業地域」のように、色がどの用途地域に対応するかが示されています。

【参考例】
無料で使える用途地域マップ(運営:メタウェアリサーチ有限会社)
・東京都新宿区の都市計画図・GIS:https://www.city.shinjuku.lg.jp/kusei/file13_08_00001.html

Step3:最終確認は「役所の担当課」へ

Webの情報は非常に便利ですが、更新のタイムラグや、地図の境界線が微妙なケースもあります。特に、物件の購入や多額の投資を伴う契約の前には、必ず自治体の担当窓口で最終確認をしましょう。これが最も確実な方法です。

多くの自治体で「都市計画課」「まちづくり課」「建築指導課」などの部署が担当していることが多いです。わからなければ、役所の窓口「民泊を検討している土地の用途地域について確認したいのですが」と伝えれば、担当部署に繋いでくれます。

具体的に用件を伝えることで、担当者もスムーズに回答してくれます。

(例)「〇〇市△△町1丁目2番3号(地番:〇〇)の土地で、旅館業法に基づく簡易宿所(または住宅宿泊事業法に基づく民泊)の運営を検討しております。こちらの土地の用途地域を教えていただけますでしょうか?また、何か特有の条例などがあれば合わせて教えていただきたいです」

【ケース別】オーナーの悩み解決!用途地域の疑問に回答

トラブルの事例のメイン画像

ここでは、多くのオーナー様が実際に直面する、少しマニアックな疑問について深く掘り下げていきます。

Q1. 購入したい土地が、2つの用途地域にまたがっています。どう判断すれば良いですか?

原則として、敷地の過半(半分以上)を占める用途地域の制限がその敷地内のすべての建物に適用されます(建築基準法第91条) これを過半の原則や過半規則と呼ぶこともあります。

例えば、100㎡の敷地のうち60㎡が「第二種住居地域(旅館業OK)」、40㎡が「第一種中高層住居専用地域(旅館業NG)」の場合、敷地全体が「第二種住居地域」とみなされ、旅館業の運営が可能になります。

用途地域における過半の原則

ただし、これはあくまで原則です。 防火規制など、別のルールが適用される場合や、自治体によって解釈が異なるケースもあります。

またきっちり半々(50㎡:50㎡)のように、どちらの地域も過半にならないケースでは自治体の判断に委ねられます。多くの自治体で、「より規制が厳しい用途地域」を全体に適用するのが一般的です。

境界線上の物件を検討する際は、絶対に自己判断せず、事前に役所の建築指導課や建築士に図面を見せて相談してください。

Q2. 用途地域の指定がない「都市計画区域外」の土地なら、自由に運営できますか?

 答えは「No」です。用途地域が定められていない区域には、「市街化調整区域」や「都市計画区域外」などがあります。

特に注意が必要なのが「市街化調整区域です。ここは市街化を抑制するためのエリアなので、原則として住宅を含む建物の建築自体が厳しく制限されています。古民家が残っていても、増改築や宿泊施設への用途変更が認められないケースがほとんどです。

「規制がない=自由」と考えるのは非常に危険です。必ず、その土地がどの区域に該当するのか、そしてどのような規制があるのかを役所で確認してください。

Q3. 最近よく聞く「規制緩和」で、不可能だったエリアでも運営できるようになった事例はありますか?

はい、あります。代表的なのが「国家戦略特区」制度を活用したものです。これは、特定の地域に限って、国の法律よりも自治体が定めた条例を優先できる制度です。

例えば、東京都大田区や大阪府などでは、この特区制度を利用して、通常は旅館業法の許可が必要な施設運営の要件を緩和した「特区民泊」が認められています。

こうした規制緩和の動向は、新たなビジネスチャンスに繋がります。国土交通省のウェブサイトや、民泊関連のニュースサイトを定期的にチェックし、最新の情報をキャッチアップする姿勢が重要です。

用途地域の確認はスタートライン!成功する一棟貸しオーナーになるために

民泊レベニューマネジメントの羅針盤

ここまでお読みいただき、用途地域に関する知識と調査方法は理解できたかと思います。

しかし用途地域の確認は、あくまで事業成功に向けたスタートラインです。

どんなに素晴らしいロケーションで、法的な条件をクリアした物件を用意できたとしても、その物件の魅力がお客様に伝わらなければ、目標とする予約数は獲得できません。

【考えるべき項目例】
○物件の価値を最大限に引き出す、魅力的なコンセプトは何か?
○思わず予約したくなるような、クオリティの高い写真は撮れているか?
○周辺の競合施設を分析し、戦略的な価格設定ができているか?
○数ある予約サイトの中から、自分の施設のファンになってくれるお客様がいる場所はどこか?

特に、画一的なホテルとは違う、ユニークな体験価値を提供する「一棟貸し」の施設は、その魅力を言語化してターゲット層に的確に届ける「集客」が成功の鍵を握ります。

法的な手続きのように明確な答えがないからこそ、多くのオーナー様が「これで本当に合っているのだろうか?」と、孤独な戦いを強いられているのが現実です。

まとめ:その先の集客戦略まで見据えて。一棟貸し専門のTABILMOで収益を最大化しませんか?

最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。

  • 用途地域とは「街のルール」であり、民泊運営の可否を決める大前提である。

  • 旅館業法での運営を目指すなら、「第二種住居地域」以上が主なターゲットになる。

  • 調査は「GISで検索」→「役所に電話で最終確認」の流れが最も確実。

  • 「またがる土地」や「規制緩和」など、専門知識が事業の成否を分けることもある。

これらの知識は、民泊を運営していくにあたり根幹となる情報なので十分に理解しておきましょう。

ただ問題なく民泊をスタートできたとしても、お客さんに宿泊してもらえなければ走らせ続けることは不可能です。

しっかりと経営戦略をたて、自分の民泊のブランディングや集客を図りましょう。

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