民泊の上乗せ条例をわかりやすく解説!主要都市の一覧と失敗しない事前チェック法

「民泊を始めたいけれど、自分の物件で営業できるか不安…」
「国の180日ルール以外にも、自治体ごとに厳しい『上乗せ条例』があると聞いて心配…」

民泊事業(住宅宿泊事業)を検討されているオーナー様にとって、法令の壁は最初の、そして最大のハードルです。特に、国が定める「年間180日」というルールのほかに、各自治体が独自に設定する上乗せ条例は、地域によって内容が大きく異なるため複雑に感じやすいポイントです。

ただし上乗せ条例は「仕組み」と「調べ方」さえ理解すれば、リスク回避も収益計画も「見える化」できます。この記事では、専門用語を極力かみ砕き、営業可否を最短で判断する手順まで落とし込んで解説します。

目次

上乗せ条例とは?180日制限との関係

上乗せ条例とは、国の住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)のルールに、自治体が追加で上乗せする制限です。代表例は、住居系エリアで平日営業を制限し、週末中心に寄せる設計です。

ポイントは次の2つです。

  • 国の上限:年間180日(届出住宅ごとに算定)
  • 自治体の追加制限:曜日・期間・区域(用途地域など)・周辺住民対応など

つまり、「180日以内だからOK」ではなく、条例で営業できる日が削られる可能性があります。最短ルートは、自分の住所に、どの制限がかかるかを先に確定することです。

 なぜこれほど厳しいのか?
背景には、民泊解禁初期に多発した「深夜の騒音」「ゴミ出しマナー違反」などの近隣トラブルがあります。自治体は住民の生活環境を守る必要があるため、特に閑静な住宅地(住居専用地域)や学校周辺(文教地区)では、上乗せ条例をかける傾向があります。

民泊新法・旅館業(簡易宿所)・特区民泊の違い(ざっくり)

区分根拠営業日数主なポイント
民泊新法(住宅宿泊事業)届出制年180日上限(+自治体の上乗せで短くなる場合)始めやすいが、上乗せ条例で収益性が激変しやすい
旅館業(簡易宿所など)許可制原則制限なし(地域・用途・構造要件あり)要件は重いが、通年で稼働できる設計が可能
特区民泊(対象エリアのみ)認定等営業日数制限なし(最低宿泊日数など要件あり)エリアが限定。成立すると稼働日数の設計がしやすい

「週末しか営業できない」などの上乗せが強い場合は、民泊新法にこだわらず、旅館業(簡易宿所)・特区民泊などを含めて、最適なスキームを選ぶのが収益面で安全です。

上乗せ条例で多い規制パターン4つ

4つ

自治体によって細部は異なりますが、上乗せ条例で出やすい規制は主に次の4類型です。

① 営業できる曜日・時間帯が制限される(週末限定など)

住居系エリアで「月〜金(平日)は不可」「週末のみ可」など、稼働日が大きく削られるタイプです。想定稼働日数=売上なので、収支に直撃します。

② 営業できる区域が制限される(用途地域・文教地区など)

同じ自治体でも、用途地域によって営業可否が変わることがあります。境界線ひとつで可否が変わるため、地図での一次確認が必須です。

民泊に関する用途地域については、下記の記事で詳しく解説しています。

「用途地域」について知る ➤

③ 近隣住民への周知・説明が求められる

届出前後で、周辺住民に書面周知を求める自治体もあります。トラブル予防としても重要で、テンプレ化しておくと運用が安定します。

④ 苦情対応・緊急時体制が求められる

家主不在型では、管理委託や迅速な駆け付け体制が実務論点になります。自治体の手引き・要領で求められる水準を確認し、自主管理か、管理委託かを先に決めると迷いません。

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最短で確認する方法:住所→用途地域→条例

調べる

上乗せ条例の確認は、コツさえ掴めば難しくありません。「住所」「用途地域」「条例本文/手引き」の順に見れば、最短で営業可否が確定します。

ステップ0:まず「どの制度でやるか」を仮決めする

民泊新法(180日)で成立するのか、旅館業(簡易宿所)を視野に入れるのか、特区民泊が対象なのか。
ここを仮決めすると、必要書類・工数・投資額・回収計画が一気に整理できます。

ステップ1:観光庁の「自治体別一覧」で、窓口と条例の有無を確認

まずは観光庁の民泊制度ポータルにある「各自治体の窓口案内(条例等の状況)」から、対象自治体を特定します。窓口(届出先)と、条例の制定状況が一覧で確認できます。

参考:観光庁:各自治体の情報・窓口案内(条例等の状況等)

ステップ2:自治体公式ページで「制限区域・制限期間」を一次情報で読む

検索するときは「自治体名 + 住宅宿泊事業(民泊) + 条例」「自治体名 + 住宅宿泊事業 実施 制限」がおすすめです。
ブログ記事だけで判断せず、必ず公式ページ公式PDF(条例本文・手引き)で確認してください

ステップ3:用途地域(都市計画GIS)で“住所がどこに属するか”確定

制限が用途地域ベースの場合、住所(地番)で境界をまたぐことがあります。
「市区町村名+用途地域 マップ」で公式GISを開き、住居表示だけでなく地番も確認できると安全です。

(重要)分譲マンションは「管理規約」を最優先で確認

分譲マンションでは、管理規約で短期宿泊の提供を禁止しているケースが多いです。記載がなくても「不特定多数の出入りを禁ずる」趣旨から不可と判断される運用もあります。
上乗せ条例の前に、まず管理会社・理事会に可否確認し、可能な場合は、騒音・ゴミ・セキュリティ対策、駆け付け体制、ハウスルールを整えておくと摩擦が減ります。

主要自治体の制限例(公式情報ベース)

自治体ごとの制限

ここでは「上乗せ条例がどう収益に効くか」をイメージしやすいよう、代表的な制限例を抜粋します。
※同じ自治体でも、区域(用途地域・文教地区など)や形態(家主居住/不在)で扱いが変わる場合があります。必ず最新の公式情報で最終確認してください。

自治体(例)制限のかかり方(イメージ)収益への影響実務メモ
横浜市住居系エリアで平日制限(例:月曜正午〜金曜正午の制限など)週末寄りになり、稼働日数が大きく削られる設計になりやすい「住居専用地域」かどうかの判定が重要
江東区区内全域で平日制限(例:月曜正午〜土曜正午の間は実施不可)基本的に週末型の設計が前提になりやすい曜日制限を前提に価格設計(連泊・週末単価)が必須
港区制限区域(用途地域+文教地区など)で、家主不在型に期間制限がかかる“営業できない期間”が長いと通年での売上が作りにくい同じ区でも「区域」により難易度が変わる
渋谷区文教地区などで、複数の“営業不可期間”が設定される例がある稼働の平準化が難しく、設計を誤ると赤字化しやすい区域・要件を満たすと例外扱いとなる設計が用意される場合もある
京都市住居専用地域で“実施できる期間が限定”される例がある繁忙期だけで成立させる設計が必要(高単価・体験・連泊)用途地域+例外要件の確認が重要
(参考)制限が少ない自治体もある区域・期間制限を置かない設計の自治体も存在上乗せが薄いほど、180日を使い切る設計が可能その分、苦情対応・管理品質で差が出やすい

規制が厳しくても収益化する運営戦略

運営戦略

上乗せ条例で稼働日数が削られても、「設計」で利益は作れます。ポイントは「稼働日が少ない前提」で、単価と価値を作り直すことです。

戦略1:週末限定なら「連泊×高単価」で成立させる

  • 金土の2泊を基本にし、チェックイン動線・清掃・鍵受け渡しを最適化
  • 大人数・一棟貸しなら「1人単価を下げつつ総額を上げる」設計がしやすい
  • 体験や目的滞在(サウナ、BBQ、記念日、ワーケーション)で価格の根拠を作る

戦略2:期間限定型なら「繁忙期に利益を集中」させる

  • 繁忙期に合わせて、最低宿泊数を上げる(2泊〜3泊)
  • 清掃回数を減らし、運用コストを下げる
  • イベント・季節に合わせた訴求(ファミリー、グループ、長期休暇)

戦略3:スキームを切り替える(旅館業・特区民泊・中長期)

「民泊新法だと週末しか取れない」など、制度上どうしても収益が合わない場合は、制度の選び直しが最短の解決になります。

  • 旅館業(簡易宿所):要件は重いが、通年設計がしやすい
  • 特区民泊:対象エリアで成立すれば稼働日数の設計がしやすい(最低宿泊日数など要件は要確認)
  • 中長期滞在:閑散期にマンスリー等を組み合わせ、稼働の谷を埋める

戦略4:管理体制を先に固めて“運用事故”を防ぐ

  • 家主不在型は「管理委託」か「駆け付け体制」を先に決める
  • ゴミ・騒音・喫煙・駐車などのルールを多言語で整備
  • クレーム初動のテンプレ(謝罪→事実確認→再発防止)を用意

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届出前チェックリスト(保存版)

チェックリスト

  • □ 物件の住所(住居表示)地番を把握した
  • □ 自治体の用途地域GISでエリア判定した
  • □ 自治体の公式ページ/手引き/PDFで「制限区域・制限期間」を確認した
  • □ 家主居住型 / 家主不在型のどちらで運用するか決めた
  • □ (マンションの場合)管理規約と理事会/管理会社の見解を確認した
  • □ 近隣周知(必要な自治体の場合)の書面テンプレを用意した
  • □ 鍵、清掃、ゴミ、騒音、緊急時の運用SOPを作った
  • □ 収支(稼働日数が削られた前提)で損益分岐を試算した
  • □ 収益が合わない場合の代替案(旅館業/特区/中長期)を用意した

よくある質問

Q. 「年180日以内」なら、どこでも民泊できますか?

A. いいえ。年180日は国の上限で、自治体の上乗せ条例により「営業できる曜日・期間・区域」がさらに狭まることがあります。

Q. 同じ区でも、場所によって可否が変わるのはなぜ?

A. 用途地域(住居系/商業系)や文教地区など、都市計画上の区分で線引きされるケースが多いためです。境界付近は特に要注意です。

Q. 規制が厳しいエリアでも、民泊は儲かりますか?

A. 成立するケースもありますが、「稼働日が少ない設計」で運営されることが前提となります。連泊化・高単価化・体験価値・制度切替など、設計が必要です。

Q. 迷ったとき、何から確認すればいい?

A. まずは観光庁の自治体一覧で窓口と条例の有無をつかみ、次に自治体公式の手引きで「制限区域・制限期間」を確認し、そのあとに用途地域GISで住所を確定するのが最短です。

まとめ:ルールを味方につけて、息の長い民泊運営を

「民泊の上乗せ条例」は一見すると厄介な壁ですが、裏を返せば地域と共存するためのルールです。
ルールを正しく理解し、適切なエリア選定や運営スタイルを選べば、安定した運営は十分に可能です。

まずは、自分の物件の用途地域自治体公式の制限を確認するところから始めてみてください。
正しい知識で準備を行い、ゲストにも地域にも愛される民泊運営を実現させましょう。

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