2025年12月現在、日本の観光業界はかつてない活況を呈しています。
2024年に訪日客数は、過去最高の3,686万人でした。2025年もその勢いは止まるどころか、11月時点で前年を超える訪日客数を記録しています。
「民泊を始めたいけれど、今からでも遅くない?」「規制が厳しくなったと聞くけれど大丈夫?」
そんな疑問をお持ちのオーナー様や事業者のために、本記事では最新の2025年データを基に、民泊の現状をを1本で理解できる内容をまとめました。
まず抑えておくべきポイントや、実務現場でしか分からない「運営のコツ」もご紹介します。
この記事でわかること
- 市場の現在地:2025年の需要データ
- 収益のリアル:損益分岐点の計算式とコスト相場
- 規制と法律:「180日ルール」の壁と、特区・簡易宿所の選び方
- 集客戦略:Airbnbだけじゃない!OTA使い分けの極意
- 運営実務:近隣トラブルをゼロにする「予防」の仕組み
データで見る:2025年の民泊市場

まずは「今、市場はどうなっているのか」を数字で把握しましょう。データを見て考えることが重要です。
インバウンドは「都市」から「地方体験」へ
2024年の訪日客数は約3,686万人で過去最高を更新しました。2025年もその勢いは継続しており、11月時点の累計が3,906万人超と、前年の年間記録を上回っています(JINTO 訪日外客数統計より)。
その中で、インバウンド客の観光行動に質的な変化が起きています。これまでは、東海道新幹線で結ばれる「東京・大阪・京都(ゴールデンルート)」に集中していました。その一方で、直近では今まで行ったことのない「地方での長期滞在」や、物ではなく体験にお金を費やす「コト消費」が急増してきています。
◯都市部の傾向:需要は高いが、競合も多い。価格競争(ダイナミックプライシング)への対応力が必須。
◯地方の傾向:アクセス(LCC/国際線)に左右されるが、滞在期間が長い。「古民家×農業体験」などで高単価が狙える。
② 国内旅行も「消費額ベース」で大きく伸長
国内旅行消費も拡大しており、民泊の需要はインバウンド一辺倒ではありません。特に、ファミリー・グループ・長期滞在は「ホテルでは取りづらい」領域で、民泊が強いカテゴリです。
届出数は5万件突破、しかし「入れ替わり」も激しい
民泊新法(住宅宿泊事業法)に基づく届出数は、2025年11月時点で累計57,000件を超えました。しかし、廃業も2万件以上出ています(廃止率約3割)。
これには、実務の壁(清掃・近隣・価格・オペ)が原因で撤退するケースや、180日制限のない『簡易宿所』や『特区民泊』へステップアップしたという前向きな廃業も含まれています。だからこそ、最初から「運営の型」を作るのが重要です。
3つの法律制度と上乗せ条例
ここが一番重要です。知らなかったでは済まされない「法律の壁」を解説します。日本の民泊には大きく分けて3つのスタイルがあります。
① 住宅宿泊事業法(民泊新法)
特徴: 届出だけで始めやすく、住居専用地域でも可能な場合が多い。
弱点: 年間180日しか営業できない。
向いている人: 初心者、週末だけ貸したい副業オーナー、マンスリー賃貸との併用を考える人。
② 特区民泊(国家戦略特別区域法)
特徴: 365日営業可能。用途地域の制限も緩やか。
条件: 大阪市や東京都大田区など「指定されたエリア」限定。多くの地域で「2泊3日以上」の滞在要件あり。
2025年の注意点: 大阪市など一部で「新規受付終了」や「指導強化」の動きがあります。最新の自治体情報を必ず確認してください。
③ 簡易宿所(旅館業法)
特徴: 365日営業可能。1泊からOK。
ハードル: 用途地域(住居専用地域はNG)、消防設備、建築基準法の適合が必要で、初期費用が高い。
向いている人: 本格的に事業として収益を最大化したい人。
必ず確認!「自治体ごとの上乗せ条例」
法律だけでなく、自治体独自の「上乗せ条例」が極めて重要です。
- 京都市: 住居専用地域では「1/15〜3/16」しか営業できないなど厳しい制限あり。
- 東京都各区: 「家主不在型は平日NG」とする区も。
- 北海道(札幌等): 学校周辺での営業制限あり。
※計画段階で、必ず区役所・市役所の「生活衛生課」等の窓口へ事前相談に行きましょう。
収益とコストの現実:いくら儲かる?どう計算する?

「民泊は儲かる」と言われますが、ドンブリ勘定は危険です。ここでは、現場で使われているリアルな計算式とコスト感をお伝えします。
損益分岐点の計算式(例)
収益計画を立てる際は、以下の基本式を使ってみてください。
利益 = (稼働率 × 平均単価 × 営業日数) - (固定費 + 変動費)
重要なのは、民泊新法の場合「営業日数は年間180日まで」という上限があることです。これを踏まえたシミュレーションが必要です。
経費の相場観(2025年版)
見落としがちなのがランニングコストです。特に清掃費と手数料は利益を大きく削ります。
| 費目 | 金額の目安・備考 |
|---|---|
| 清掃費 | 1回 5,000円〜30,000円 ※広さやリネンサプライ契約により変動 |
| OTA手数料 | 売上の10〜15%程度 |
| 光熱費・Wi-Fi | 月 2.5万円〜4万円 ※夏冬のエアコン代に注意 |
| 消耗品 | 月 3,000円〜1万円程度 |
| 管理委託費 | 売上の20%前後 or 定額 |
Tabilmo流のヒント
都心のワンルーム民泊の場合、家賃の3倍の売上があれば「成功」と言われます。しかし、180日制限があると天井が見えてしまいます。
- 平日:国内OTAで安く長く埋める
- 週末・イベント時:海外OTAで単価を上げて利益を取る
この「二段構え」のダイナミックプライシングが現在の鉄則となっています。
ダイナミックプライシングは収益に直結する重要な、価格設定方法です。次の記事で詳しく解説しているので要チェックです。
➤民泊の価格設定をAIで最適化!ダイナミックプライシング導入の手順と失敗例
集客チャネル:Airbnbだけでは勝てない?

「Airbnbに載せておけば埋まる」時代は終わりました。2025年はリスク分散と最大化のために「マルチチャネル」が基本です。
OTAサイトの使い分けマップ
- TABILMO(タビルモ):一棟貸しの民泊、貸別荘、コテージ専門で、ゲストのニーズに対応しやすい。
- Airbnb: インバウンド、体験重視層、長期滞在に強い。
- Booking.com / Agoda: 即時予約を好む層、アジア圏の旅行者に強い。
- 楽天トラベル / じゃらん: 国内出張、家族旅行、平日の空室埋めに効果絶大。
サイトコントローラーの導入は必須
複数のサイトに掲載すると「ダブルブッキング」が起きます。これを防ぐために、サイトコントローラーと呼ばれる在庫と料金を一元管理するシステム(Beds24, AirHost, ねっぱん!など)を導入することがおすすめです。一棟貸しのコテージや部屋貸しの民泊など、部屋数が1つでも推奨されます。
また、予約管理システム(PMS)を使えば、サイトコントローラーで在庫管理をしつつ、予約情報の自動連携や宿泊状況のレポーティングを自動で行うことができます。より効率的な運営を目指すなら利するのががおすすめです。
運営オペレーション:トラブル予防が最大の防御
民泊運営で最も恐れるべきは「近隣クレームによる撤退」です。クレームは起きてから対処するのではなく、起きない仕組みを作って予防することが全てです。
近隣トラブル予防の3ステップ
- ゴミ出しルールの徹底:
外国人ゲストは日本の細かい分別を知りません。「写真付きの多言語ポスター」を室内に掲示し、ゴミ箱自体にもピクトグラムを貼りましょう。地域のゴミ処理方法に従う必要もあります。 - 騒音対策(IoT活用):
「NoiseAware」などの騒音センサーを導入し、一定デシベルを超えたら自動でゲストとホストに警告メッセージが飛ぶ仕組みを入れましょう。「見られている」という意識が抑制力になります。 - アクセスガイドの動画化:
「道に迷って近隣の家の呼び鈴を押してしまった」というトラブルが多発しています。駅から物件までの道のりを動画で送り、「最後の10メートル」を詳細に案内することで防げます。
最近は近隣トラブルが原因で、豊島区を始め規制強化を進める自治体も増えてきています。ここは必ずチェックしておきたいポイントの1つです。
まとめ:2025年の民泊成功のカギ
2025年の民泊は、ただ部屋を提供するだけでは生き残れません。
「都市部ならダイナミックプライシングでの単価最大化」、「地方なら長期滞在・体験型の付加価値」といった明確な戦略が必要です。
そして何より「法令遵守」が、長く安定して稼ぎ続けるための最強の投資です。180日制限や消防法を甘く見ず、正しい知識で運用すれば、インバウンド拡大の波に乗って大きな成果を出せるはずです。
※本記事は2025年12月18日時点の情報に基づいています。法令や条例は変更される可能性があるため、実際の届出や契約の際は必ず管轄の行政窓口や専門家にご確認ください。

