「競合施設が増えてきて、予約が埋まりにくくなった」
「宿泊単価を上げたいけれど、決定打に欠ける」
そんな悩みを抱えるオーナー様に注目されているのが「サウナ付き民泊」です。
昨今のサウナブームにより、旅先でととのいたいニーズは急増中。サウナの導入は、施設の価値を高め、高単価でも選ばれる施設になることを可能にします。
しかし、課題となるのが法律の壁です。
「個人の別荘感覚で設置したら、保健所から指導が入った」「消防法を知らずに設置して、後から高額な工事費がかかった」といった失敗事例も少なくありません。
この記事では、サウナを導入する際の一番の難関である「許可取り」の手順から、クリアすべき法律、運営のコツまでわかりやすく解説します。
民泊×サウナがなぜ人気?集客効果と市場需要を解説

サウナは今や一過性のブームを超え、旅の目的そのものになりつつあります。民泊市場において「サウナ付き」が大きな差別化となる理由を見ていきましょう。
サウナブームによる「個室サウナ」へのニーズ拡大
公衆サウナや銭湯は人気ですが、「混雑していて落ち着かない」「タトゥーがあって入れない」「カップルや家族で一緒に楽しめない」という悩みも尽きません。
そこで求められているのが、誰にも邪魔されない「プライベートサウナ」です。民泊や一棟貸し宿であれば、好きなタイミングでロウリュを楽しんでととのう、といった贅沢な時間が提供できます。特にコロナ禍以降定着した「プライベート志向」とも相性が良く、サウナーからの予約が増え続けています。
競合との差別化!宿泊単価アップと稼働率向上の例
サウナの導入は、単なる設備の追加ではなく、「高単価化」への近道です。
- 例:都内から1時間の古民家民泊
- 導入前:平日稼働率が低迷
- 導入後:バレルサウナを設置し、単価を25%アップ。それでも週末は数ヶ月先まで満室に。
サウナをうまく活用すれば、上記のような投資対効果を実現することも可能となります。
サウナの強みは「季節を問わない」ことです。通常なら集客が落ち込む梅雨や冬場でも、サウナがあればそれが「行く理由」になります。閑散期の稼働率を底上げし、年間を通じて安定した収益を生み出す強力な武器となるのです。
またサウナーの方たちは、サウナを目的としないゲストに比べて、遠方の施設にも訪れやすい傾向にあります。その点を踏まえても、サウナは大きな集客手段になるのです。
民泊のサウナ設置に必要な許可は?知っておくべき4つの法律

「家庭用サウナを買って置くだけなら大丈夫では?」と思われがちですが、民泊としてお客様に提供する場合は、さまざまな法律の規制対象となります。
無許可で設置すると営業停止や罰則のリスクがあります。まずは、関わってくる4つの法律の全体像を把握しましょう。
①住宅宿泊事業法・旅館業法
まず前提として、ご自身の施設がどの法律で運営されているかを確認してください。
- 住宅宿泊事業法(民泊新法):年間180日の制限あり。サウナ投資の回収計画をシビアに立てる必要があります。
- 旅館業法(簡易宿所など):365日営業可能。高額なサウナ設備を導入しても回収しやすいため、本格的なサウナ民泊に向いています。
すでに運営中の民泊施設にサウナを追加する場合と、これから新規でサウナ付き民泊を開業する場合では、必要な手続きや確認事項が異なります。
例えば、既存の旅館業許可を持つ施設であれば、建物自体がすでに高い防火基準などを満たしているため、旅館業法上は「構造設備の変更届」などの手続きで済むケースがあります(※別途、公衆浴場法の許可は必要)。
一方、住宅宿泊事業法の施設の場合、サウナを設置することで単なる住宅の範囲を超え、消防法や建築基準法上の扱いが変わり、大規模な改修が必要になるなど、手続きが複雑化する可能性があるので注意が必要です。
②公衆浴場法
サウナを設置する際、最も大きなハードルとなることが多いのが「公衆浴場法」です。この法律は、一般的な銭湯や温泉施設だけでなく、不特定多数の人が利用する可能性のある浴場施設全般を規制対象としています。
民泊や一棟貸し宿のサウナであっても、宿泊者に使用させる場合は「その他の公衆浴場」とみなされ、保健所の許可が必要になるケースが大半です。
しかしこの解釈については、「宿泊者限定なら許可は不要」という自治体もあれば、「1人でも泊めるなら許可が必要」など、自治体により判断が分かれます。必ず自治体の保健所に確認しましょう。
③消防法
サウナを設置する上で、火災の予防と利用者の安全確保は最優先事項です。特に高温になる電気サウナや、実際に火を使用する薪サウナは、消防法上「火気使用設備」に該当し、規制の対象となります。
- 届出:電気式・薪式問わず、管轄の消防署への設置届出が必要です。
- 内装:サウナ室や脱衣所のカーテン・じゅうたん等は、燃え広がりにくい「防炎物品」である必要があります。
④建築基準法
既存の建物にサウナを後付けする場合、特に注意が必要となるのが「建築基準法」です。サウナの設置によって建物の用途変更が必要になったり、建物の積載荷重(重さ)を超える負荷がかかったりするリスクが考えられます。
- 積載荷重(重さ):サウナ本体+水風呂の水量はかなりの重量になります。床が抜けないか、構造上の確認が必要です。
- 用途変更:建物の規模や用途によっては、建築確認申請が必要になる場合があります。
サウナ設置を計画する段階で、建築士などの専門家に相談し、建物の構造安全性について確認を行うことをおすすめします。
【最難関】民泊サウナと「公衆浴場法」の許可基準と例外

多くのオーナー様が頭を悩ませるのが、保健所管轄の「公衆浴場法」です。なぜこれが「壁」と呼ばれるのか、その実情と突破口を解説します。
原則として「その他の公衆浴場」の営業許可が必要
法律上、宿泊者に対して反復継続してサウナを提供する場合、「その他の公衆浴場」に分類され、原則として「公衆浴場」の営業許可が必要です。
許可を取るためには、男女別の更衣室、指定された換気能力、水質基準など、一般的な住宅スペックではクリアが難しい設備基準が求められます。
許可が不要な「例外ケース」はある?
可能性があるのが、「公衆浴場法の適用外(許可不要)」と判断されるケースです。一般的に、以下の条件が揃うと許可不要となる場合があります。
- 一棟貸し切り:他のお客様と混在せず、特定のグループのみが占有する場合
- 家族風呂扱い:客室ごと、または貸切利用として提供される場合
ただし、この解釈は保健所(自治体)によって大きく異なります。
「一棟貸しでも許可が必要」という厳しい地域もあれば、「宿泊者専用ならOK」という地域もあります。また過去に許可が不要であった地域でも、少し条件変わると許可が必要になる場合があることに注意が必要です。
自己判断は禁物です。必ず管轄の保健所へ相談に行きましょう。
サウナ設置の「消防法」対策!消防署への届出と設備

お客様の命を守るため、消防法は絶対に無視できません。「どのようなサウナを入れるか」で対応が変わります。
電気サウナ・薪サウナで異なる「火気使用設備」の届出
熱源の種類によって、設置のハードルが異なります。
- 電気ストーブ:比較的ハードルは低めですが、定格消費電力に応じた届出が必要です。
- 薪ストーブ:「火を使用する設備」として規制が厳しくなります。煙突の設置、壁からの離隔距離、不燃材の使用など、クリアすべき基準が多くなります。雰囲気は最高ですが、導入難易度は高いと心得ましょう。
消防法および各自治体の火災予防条例では、熱源の種類(薪・電気)に関わらず、「サウナ設備」そのものが届出の対象とされています。サウナを設置する際は、必ず管轄の消防署へ以下の手続きを行ってください。
火を使用する設備等の設置届出書: ストーブ等の熱源機器を設置するために必要です。
防火対象物工事等計画届出書: サウナ室をつくるなど、内装工事を行う場合に必要です。
事前に相談や届出を行わず、後から無許可設置が発覚した場合、消防法違反として「使用停止命令」や罰則(罰金など)の対象となる可能性があります。
スプリンクラーや自動火災報知設備の設置義務
もっともコストに影響するのがここです。サウナを設置することで建物の用途や面積要件が変わり、スプリンクラーや自動火災報知設備といった消防設備の設置が義務付けられることがあります。これらは数百万円規模の工事になることも。
「サウナを買うお金はあるが、消防設備の追加工事費が払えない」とならないよう、事前の見積もりが不可欠です。
保健所・消防署へ行く前に!民泊サウナ導入の4ステップ

「いきなり役所に行っていいの?」と不安な方へ。手戻りを防ぐための正しい手順をご紹介します。
1. 物件調査と関係各所への「事前相談」
サウナを買う前に、事前相談が大切です。まずは以下の3箇所へ図面と「やりたいこと(事業計画)」を持って相談に行きましょう。
- 保健所:公衆浴場法の許可が必要か?例外措置はあるか?など
- 消防署:必要な消防設備は何か?薪ストーブは設置可能か?など
- 建築指導課:床の補強や用途変更は必要か?など
2. 消防法令適合通知書の取得と「本申請」
保健所への公衆浴場法の許可申請には、消防署が発行する「消防法令適合通知書」が必須となるケースがほとんどです。この通知書は、建物や設備が消防法に適合していることを証明する重要な書類であり、これがないと保健所の審査が進まないことが多いからです。まずは消防署への手続きを先行して進めましょう。
この通知書を添えて、保健所への公衆浴場法に関する本申請(または不要であることの確認申請)を行います。その他、必要に応じて建築基準法に基づく建築確認申請や、旅館業法・住宅宿泊事業法における変更届なども並行して進めましょう。
3. 設備の設置工事と「立入検査」のポイント
許可の見通しが立ったら工事・設置を行います。設置後、保健所と消防署の担当者が現地に来て、図面通りに設置されているか、安全基準を満たしているかの「立入検査」が行われます。
ここで不備があると、追加工事が発生して営業開始が遅れてしまうので注意が必要です。事前に検査でチェックされる具体的なポイントを把握し、万全の状態で検査に臨むための準備をしておきましょう。
4. 営業許可書の交付と営業開始
すべての検査に合格すれば、晴れて営業許可(または届出完了)となります。許可証は施設内の見える場所に掲示しましょう。
サウナ設置の許可取得までの期間は、物件の状況や申請内容、自治体の処理状況によって異なりますが、一般的に数ヶ月単位でかかります。そのため、現実的なスケジュールを組み、余裕を持った計画を立てることが大切です。
サウナ付き民泊のメリットと導入費用の目安

ここまで読んで「大変そうだな…」と思われたかもしれませんが、それを乗り越えるだけのメリットがあります。費用感と合わせて冷静に判断しましょう。
【メリット】オフシーズンの集客力とリピート率向上
前述の通り、サウナは閑散期対策として最強です。また、サウナ利用者は「ととのう体験」に感動すると、高い確率でリピーターになります。「あのサウナがあるから、またあそこに行こう」という指名買いが起こるのは、サウナ民泊ならではの強みです。
【デメリット・費用】初期費用(200万~)とランニングコスト
導入コストは、サウナ本体代だけではありません。
- サウナ本体(バレル等):80万円〜200万円
- 電気・ガス・水道工事費:30万円〜100万円
- 消防設備工事費:数十万円〜数百万円
- 許認可申請費用(行政書士等):20万円〜
さらに、日々の電気代や清掃の手間といったランニングコストも発生します。これらを上回る「宿泊単価アップ」が見込めるエリアかどうかの見極めが重要です。
【リスク】維持管理の手間と事故防止のルール作り
「汚いサウナ」は逆効果です。木材の乾燥やカビ対策、水風呂の水質管理など、清掃クオリティがレビューに直結します。
また、飲酒後の利用による事故などのリスクヘッジも必須です。事故を未然に防ぐために利用ルールを作成し、宿泊者に周知しましょう。例えば、「飲酒後の利用禁止」「利用は1回につき〇分までとし、休憩を挟むこと」「妊娠中や高血圧の方は利用を控えること」「お子様の利用は保護者同伴で」といった具体的な注意喚起があげられます。
万が一の事故に備え、賠償責任保険への加入も検討しましょう。
失敗しない!サウナ民泊の運営を成功させる3つのコツ

最後に、許可取得後に「選ばれる施設」にするためのポイントをお伝えします。
ターゲットに合わせたサウナ選び(バレル・テント・屋内)
- SNS映え・若者狙い:丸い形状が可愛い「バレルサウナ」
- 初期費用を抑える・イベント性:「テントサウナ」(※強風時の管理に注意)
- 安定稼働・ファミリー層:天候に左右されない「屋内埋め込み型」
トラブル回避!利用規約と免責事項の明記
「サウナ内での飲酒禁止」「12歳以下の利用は保護者同伴」など、禁止事項は予約サイトと現地に明記しましょう。万が一の事故に備えた免責事項も弁護士等の専門家に相談して作成することをおすすめします。
SNS映えを意識した「ととのいスペース」の演出
サウナそのものと同じくらい重要なのが「外気浴スペース」です。景色の良いデッキにインフィニティチェア(リクライニングチェア)を置くだけで、満足度は跳ね上がります。ポンチョやドリンクを用意するなど、「体験」をデザインしてSNSで発信しましょう。
まとめ:法律や許可を正しく理解して、魅力的なサウナ付き民泊を実現しよう!
民泊へのサウナ導入は、簡単ではありません。特に「公衆浴場法」と「消防法」の壁は厚く、安易な導入は大きなリスクを伴います。
しかし、手間がかかるからこそ、競合が容易に真似できない強力な武器になります。正規の手順で許可を取得し、安全で魅力的なサウナ空間を作り上げれば、それは長く利益を生み続ける資産となるはずです。
まずは、ご自身の物件エリアの管轄保健所へ相談に行くことから始めるのがおすすめです。法的なクリアランスを確保した上で、お客様に最高の「ととのい」体験を提供しましょう。

