民泊の非常用照明器具とは?設置工事の基準から免除・緩和措置まで徹底解説

民泊や一棟貸しの宿泊施設を運営する際、避けては通れないのが、宿泊者の安全確保と法令遵守です。

特に、火災や地震などの非常時に、ゲストの命を守る生命線となるのが「非常用照明器具」です。しかしこの設備に関しては、以下のようなお悩みが多くあがります。

  • 「誘導灯(非常口マーク)とは何が違うの?」

  • 「戸建ての民泊でも、高額な工事をして設置しないといけない?」

  • 「なるべくコストを抑えて、法的にクリアする方法を知りたい」

実は、民泊の運営形態や建物の構造によって、数十万円の本格的な電気工事が必要なケースもあれば、数位千円の器具で済むケースもあります。

この記事では、民泊における非常用照明の設置基準や、工事費を大幅に浮かすための「免除・緩和条件」、そして具体的な器具の選び方について、建築基準法や消防関連法令に基づいて分かりやすく解説しますよ。

「非常用照明器具」とは?誘導灯との違い

まずは「非常用照明器具」と、よく混同される「誘導灯」との違いを理解しておきましょう。どちらも「逃げるための設備」ですが、役割と根拠となる法律が異なります。

役割の違い

設備名非常用照明器具誘導灯(誘導標識)
主な役割「明るさ」の確保。停電時に真っ暗になるのを防ぎ、足元の安全やパニックを防止する。「方向」の指示。「出口はあちら」など、避難口の場所や方向を教える。
見た目普段は消灯。停電時にバッテリーで自動点灯。緑色の背景に「人が走るマーク」が描かれている。
設置場所居室、客室、廊下、階段など玄関、廊下、階段の踊り場など
根拠法令建築基準法消防法
民泊施設では、原則として両方の対策が必要になります。「誘導灯があるから非常用照明はなくていい」とはなりませんのでご注意ください。

なぜ民泊に必須なのか?

民泊を利用するゲストは、その建物の構造や間取りを熟知しているわけではありません。夜中に火災や地震で停電した場合、真っ暗な中で慣れない部屋から脱出するのは困難です。ゲストの命を守るため、そしてオーナーとしての安全配慮義務を果たすために、設置は必須となります。

民泊の種類別!設置基準と法規制【早見表】

変更点

非常用照明の設置義務は、「どの法律で民泊を行うか」と「建物の規模」によって大きく異なります。

運営形態ごとの基準比較

民泊の種類適用法規設置義務の傾向
住宅宿泊事業法(民泊新法)建築基準法上は「住宅」扱い比較的緩やか(代替措置あり)。一般的な戸建てやマンションの一室であれば、懐中電灯(携帯用照明)等での対応が認められるケースが大半です。
旅館業法(簡易宿所)建築基準法上は「特殊建築物」厳しい(原則設置)。ホテルや旅館と同じ扱いとなるため、原則として固定式の非常用照明が必要。ただし、小規模施設(30㎡未満など)には緩和規定があります。
特区民泊特区法・条例自治体による。基本は簡易宿所に準じますが、自治体の条例により独自の緩和ルールが設けられている場合が多いです。

民泊運営において、理解が必須の建築基準法についても十分に確認しておきましょう。

【注意】基準が厳しくなる危険なケース

上記の区分にかかわらず、以下の条件に当てはまる建物は「火災時の危険度が高い」とみなされ、運営形態にかかわらず厳しい基準で本格的な器具の設置が求められる可能性があります。

  • 3階建て以上の建物(3階に客室がある場合など)

  • 無窓の居室がある(窓がない、または窓が隣地境界線に近く採光基準を満たさない部屋)

  • 延べ床面積が大きい(例:500㎡以上など)

  • 地下に居室がある

 

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コスト削減の鍵!工事不要になる「免除・緩和」条件

本来、建築基準法では、停電時に30分以上点灯する予備電源(バッテリー)を備えた照明器具の設置が義務付けられています。これを電気工事で行うと数十万円かかりますが、条件次第で「工事不要」や「設置免除」が可能です。

① 民泊新法なら「懐中電灯」でOKなのか?

住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出を行う場合、国土交通省の告示により、以下の条件を満たせば「非常用照明設備の設置」と同等の「安全装置」とみなされます。

▼ 代替措置として認められる要件

  • 設置場所
    各宿泊室および避難経路(廊下・階段等)に設置すること。
    ※宿泊室では「出入り口付近」など、暗闇でもすぐに見つけられる場所が望ましいです。

  • 器具
    すぐに使用できる携帯用照明器具(懐中電灯など)であること。
    ※市販のLED懐中電灯や、コンセントから抜くと点灯する保安灯などが該当します。

  • 固定(常設)
    壁掛けフック等を使用し、所定の場所に「常設」されていること。
    「引き出しの中にしまってある」状態はNGです。必ず目に見える位置に固定してください。

  • 点灯
    手に取った際、または停電時にスイッチ操作で確実に点灯すること。
    ※電池切れや故障がないよう、定期的なチェックが必須です。

【ポイント】
この要件を満たせば、電気工事費0円で対応可能です。既存の戸建てを民泊にする場合は、まずこの方法が適用できるか検討しましょう。ただし、3階建て以上や規模が大きい物件は対象外になる場合があるため、必ず行政への確認が必要です。

② 旅館業法でも「免除・緩和」はある?

旅館業法で簡易宿所の許可を取る場合でも、以下の建築基準法施行令(第126条の4)の特例等に該当すれば、設置自体が免除、あるいは緩和されることがあります。

  • 完全免除の可能性があるケース

    • 一戸建ての住宅または長屋であること。

    • 避難階(1階など)の居室で、屋外への出口へ歩行距離が短い場合。

  • 緩和措置(懐中電灯でOK)になるケース

    • 施設全体の延べ床面積が30㎡以下の場合。

    • 主要な避難経路の内装が不燃・準不燃材料で仕上げられている場合。

【重要】
これらの免除・緩和規定の判断は非常に複雑で、自治体の建築指導課や消防署によって解釈が異なる場合があります。「戸建てだから大丈夫だろう」と安易な自己判断をせず、必ず図面を持って担当窓口や消防署へ事前相談に行きましょう。

器具の種類と選び方|民泊におすすめなのは?

非常用照明種類

民泊施設で導入しやすい非常用照明には、大きく分けて3つのタイプがあります。物件の状況と予算に合わせて選びましょう。

①コンセント型(工事不要・民泊向き)

家庭用コンセントに差し込んで設置するタイプです。

  • 特徴: 普段はナイトライト(足元灯)として使え、停電時には自動点灯します。コンセントから抜けば懐中電灯として持ち運べる製品が多く、ゲストの利便性が非常に高いです。

  • 費用相場: 1個 3,000円〜6,000円程度

  • おすすめ: 戸建て民泊、マンション民泊、初期費用を抑えたい方。

②乾電池式 携帯電灯(懐中電灯)

壁掛けホルダーに常設するタイプです。

  • 特徴: 最も安価。ただし、単に置いておくだけではダメで、「所定の場所に固定されていること」「確実に点灯すること」が求められます。

  • 費用相場: 1個 1,000円〜3,000円程度

  • おすすめ: 民泊新法の物件(代替措置適用)、コスト最優先の場合。

  • 注意点: 100円ショップの製品ではなく、消防認定品やJIS規格に適合した信頼できる製品を選んでください。

③電源直結型(要工事)

天井や壁に配線を埋め込む、一般的なビルやホテルで見かけるタイプです。

  • 特徴: 見た目がスッキリし、バッテリー管理もしやすい。建築基準法上の厳しい基準をクリアする必要がある場合に採用します。

  • 費用相場: 本体1〜2万円 + 電気工事費(数万円〜数十万円)

  • おすすめ: 大規模施設、フルリノベーションをする場合。

 

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設置から工事の流れ・業者選びのポイント

もし「電源直結型」の設置が必要になった場合や、不安なのでプロに任せたい場合の流れを解説します。

Step1:管轄の消防署・建築課へ事前相談

物件の図面を持参し、「どの部屋に」「いくつ」「どんな器具を」設置する必要があるか指導を受けます。この段階で「免除規定」が使えるかどうかも必ず確認してください。

Step2:業者選定と相見積もり

非常用照明の設置は、「電気工事士」の資格が必要です。また、消防署への届出(設置届・着工届)が必要な場合もあるため、「民泊の実績がある電気工事業者」または「消防設備士」に依頼するのが安心です。

金額に幅が出やすい工事なので、2〜3社から相見積もりを取りましょう。

Step3:工事・設置

工事自体は、小規模な施設であれば半日〜1日で完了します。コンセント型や電池式の場合は、DIYで設置可能です。

Step4:定期点検・メンテナンス

設置して終わりではありません。法律により、以下の点検と報告が義務付けられる場合があります。

  • 機器点検(6ヶ月ごと): 外観やバッテリーのチェック。

  • 総合点検(1年ごと): 実際に点灯させて性能を確認。

  • バッテリー交換: 器具の内蔵バッテリーは4〜6年で寿命を迎えます。交換時期を過ぎると法令違反となるため、シール等で管理しましょう。

非常用照明に関するよくある疑問

はてな

Q. 古民家を民泊にする場合、照明の基準はどうなりますか?

A. 民家は、窓が雨戸や障子で塞がれており「無窓居室」の判定を受けやすい傾向にあります。また、現行の法基準に合わせるのが難しい「既存不適格建築物」として扱われることも多いですが、民泊の営業許可を取るタイミングで、安全設備の設置を求められるのが一般的です。

電池式ライトによる代替措置が可能か、あるいは誘導灯の増設が必要か、早めに行政と協議することをおすすめします。

Q. 宿泊室の照明が非常灯代わりになりませんか?

A. 一般的な家庭用の照明器具は、停電すると消えてしまうため、非常用照明の代わりにはなりません

ただし最近では、停電時に内蔵バッテリーで点灯する「保安灯機能付きシーリングライト」も販売されています。これが建築基準法の認定を受けた製品であれば、非常用照明として認められる可能性があります。

Q. 消防署の立ち入り検査で指摘されたらどうなりますか?

A. 指摘を受けた場合、まずは「改修計画書」の提出を求められ、期限内に設置や交換をする必要があります。これに従わず放置すると、営業停止命令許可の取り消し、最悪の場合は刑事罰の対象となるリスクがあります。指摘を受けたら即座に対応しましょう。

まとめ:賢く選んで、ゲストに安心を

非常用照明は、一見すると「コストがかかる面倒な設備」だと思うかもしれません。しかし、民泊運営においては「どの法律に基づいて運営するか」「建物の条件はどうか」を正しく整理することで、以下の3つのメリットが得られます。

  1. 無駄な工事費をカットできる

  2. 法令遵守による営業リスクの回避

  3. ゲストからの信頼獲得

まずは、ご自身の物件が「免除・緩和」の対象になるか、管轄の行政窓口へ相談に行くことから始めてみましょう。適切な設備選びで、安全で快適な民泊運営を実現してください!