民泊の消費税・固定資産税はどうなる?確定申告前に知りたい税金・経費を解説

  • 2025年9月26日
  • 2025年10月28日
  • 民泊

民泊運営を考えたとき、「どんな税金がかかるのだろう?」「確定申告は必要なのだろうか?」と疑問を抱く方は少なくありません。実際に利益が出た場合には原則として申告が必要となり、正しい知識がなければ思わぬ負担につながります。

本記事では、民泊にかかわる税金の全体像と 申告の流れ、節税のポイントを徹底解説します。税金への不安をなくし、自分で申告・節税に取り組めるよう準備を整えましょう。

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目次

民泊運営でかかる税金は?

税金

所得税

民泊運営の年間収入から必要経費を差し引いた額が「所得」となり、その所得に課税されます。課税所得には超過累進税率が適用され、さらに基準所得税額に対して復興特別所得税が加算されます。課税の手続きは毎年の確定申告時におこなわれ、納付期間は通常、翌年2月16日から3月15日までです。

tips!
●復興特別所得税:
2013〜2037年の間、東日本大震災からの復興に必要な費用を集めるために、通常の所得税に上乗せして納める特別な税金。税額は、その年の所得税額の2.1%。

住民税

住民税は前年の所得全体を基準に、都道府県民税と市区町村民税として課されます。翌年6月に納付通知が届き、通常は年4回にわけて支払う仕組みです。

所得税の申告をすれば、多くの自治体では住民税の申告を改めておこなう必要はありません。また、給与所得者であっても民泊運営による雑所得が20万円以下でれば、所得税の申告は不要とされています。ただし、所得時の申告が不要の場合でも、住民税の申告は必要です。

個人事業税

地方税法で定められた法定業種に該当し、事業所得が年間290万円を超えると課税されます。民泊の運営形態によっては、税法上「旅館業」として扱われ、その場合の個人事業税の税率は5%です。なお、納付時期は年2回が基本で、8月と11月にわけて支払います。

固定資産税

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課される税金で、課税標準に応じて1.4%の税率がかけられます。賃貸物件として民泊運営をしている場合は、オーナーが納税する決まりです。

宿泊税

観光振興を目的とした法定外目的税で、宿泊者が負担し、事業者が申告・納付をおこないます。課税対象は宿泊料金で、多くの自治体が1泊あたりの料金に応じて税額を設定しています。

宿泊税は各月分を翌月末までに申告・納付します。ただし、申告の負担を軽減するため、自治体によっては四半期ごとにまとめて申告・納付できる特例制度があります。

あなたの民泊はどれ?所得区分の判断が節税の第一歩

所得区分の種類:事業所得・不動産所得・雑所得

民泊運営で最初に押さえるべきは「所得区分」です。税額計算や確定申告の方法は、この区分によって大きく変わります。民泊を運営する場合、下記の3区分のいずれかに該当することが多いです。

事業所得

継続的かつ組織的に民泊運営をおこなっている場合に該当します。複数物件を運営していたり、主たる収入源となっている場合は事業所得と判断されやすいです。控除額や節税効果が大きいのはメリットですが、一方で記帳や申告に手間がかかります。

不動産所得

掃除や食事の提供などを伴わず、物件を貸すだけの運営形態の場合に適用されます。青色申告特別控除の上限はおおむね10万円で、事業所得よりも節税効果は小さめです。なお、民泊は宿泊サービスの提供を伴うのがほとんどのため、民泊運営で不動産所得とみなされるケースは限定的です。

雑所得

雑所得は、副業として民泊を小規模に運営する場合に当てはまります。手続きが簡単な一方で、節税効果はほとんど見込めません。

民泊経営における所得区分の判断基準

民泊の所得区分を判断するには、営利性や継続性、そしてサービスの実態を客観的に確認するのがポイントです。たとえば、プラットフォームに継続して掲載し、不特定多数の宿泊者を繰り返し受け入れている場合は、営利性・継続性が強いとみなされます。

最終的な区分は複数の要素を総合的に見て判断されるため、迷ったときは税理士に相談するといいでしょう。

確定申告の対象となる収入

民泊運営で大切なのは、どこまでを「収入」として計上するかを正しく把握することです。宿泊料金だけでなく、ゲストから受け取る清掃料金や追加サービス料も、原則として事業収入に含めて申告します。

青色申告と白色申告の違いとメリット

青色申告を選べるのは、民泊の所得が事業所得または不動産所得に該当する場合です。それ以外のケースでは白色申告となります。

青色申告は、複式簿記での記帳と貸借対照表の提出が条件で、特別控除は55万円となります。さらに電子申告(e-Tax)などの要件を満たすと、控除額は最大65万円に拡大されます。

こうした控除に加え、青色申告には大きな節税メリットがあります。たとえば、家族に給与を支払った場合に必要経費として認められる「青色事業専従者給与」や、赤字が出た年に翌年以降3年間の黒字と相殺できる「純損失の繰越控除」などです。これらを活用すれば、民泊運営の利益を効率的に抑え、納税額を大幅に減らせるでしょう。

民泊で経費にできるもの・できないもの

経費

物件の維持・管理に関する経費

清掃委託費やリネン代、消耗品、修繕費などは、民泊専用の物件であれば全額を経費にできます

一方で、自宅を兼ねて使う場合は生活と事業の両方にまたがるため、使った割合に応じて経費を計算します。たとえば、水道光熱費は利用面積や日数で分け、通信費は業務で使った時間の分を経費とします。

ゲスト対応に関する経費

ゲストを迎えるために必要なアメニティ代・ウェルカムギフト・保険料などは、事業との関連性が明確であれば経費に算入できます。さらに、通信にかかる費用も対象です。たとえば、ゲストが利用するWi-Fiの通信費や、予約管理やゲストとの連絡に使うスマートフォンの料金がこれにあたります。

集客・運営に関する経費

OTA(オンライン旅行予約サイト)の手数料・広告費・独自サイトの作成費・行政書士への報酬・交通費などは経費に計上できます。特筆すべきは、「Airbnb」や「Booking.com」といったOTAに支払う手数料です。民泊の予約を集めるために欠かせない出費であり、運営コストにおいて大きな割合を占めます。

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忘れてはいけない減価償却費とは?

民泊運営では、建物や設備などの高額な資産を購入した場合、購入時に一括で経費にせず、耐用年数にわけて少しずつ経費に計上します。これを「減価償却費」といいます。

民泊で使う建物・設備ごとの耐用年数の目安は次のとおりです。

資産の種類耐用年数の目安
木造建物(住宅用)22年
鉄筋コンクリート造(住宅用)47年
冷暖房機器6年
家具・什器8年

減価償却費は現金の支出がなくても毎年の経費に計上でき、所得を圧縮できます。副業で民泊を営む場合、赤字になれば給与所得と損益通算でき、源泉徴収された所得税の一部が戻る可能性があります雑所得の場合は不可能)。

注意!これは経費にできない

以下のような支出は、原則として経費にできません。

  • 事業主個人の食費や衣類などの私的な支出
  • 所得税や住民税(事業そのものに課される個人事業税は経費に算入可能)
  • ローン返済の元本部分(利息は経費にできる)
  • 賃貸物件の敷金(預け金扱いのため経費にならない)
  • 事業と無関係な支出

これらを誤って計上すると、税務調査で否認される可能性があります。経費に含めるか迷ったときは、「事業との関連性を説明できるか?」を基準に判断してください。

民泊の「消費税」は申告が必要?インボイス制度の影響も解説

消費税の課税対象となる収入の範囲

民泊運営による宿泊料収入は、原則として消費税の課税対象になります。ただし、すべての事業者が納税義務を負うわけではありません。

消費税の納税義務がある「課税事業者」とは、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超える場合などに該当します。一方で「免税事業者」は基準期間の売上が1,000万円以下の場合で、特定期間の判定や任意選択によって例外的に課税事業者になるケースもあります。

Airbnbなどの手数料と消費税の関係

「Airbnb」や「Booking.com」といった海外事業者に支払う手数料は、「特定課税仕入れ」にあたります。課税売上割合が95%未満で一般課税を選択している場合には、リバースチャージ方式で申告・納付が必要です。

リバースチャージ方式とは、海外の会社に支払った手数料などにかかる消費税を、日本の利用者が自分で申告・納税する仕組みです。たとえば「Airbnb」に手数料を払う場合、本来ならAirbnbが日本に消費税を納めるべきですが、海外事業者は日本で納税しません。そのため、サービスを受けたホストが代わりに消費税を計算して納めます。

Tips!
●特定課税仕入れ:
海外の事業者が提供する、日本の消費税が課税されないサービスを国内の事業者が利用した場合に、そのサービスを受けた国内の事業者が消費税を納める義務を負う取引のこと。
リバースチャージ方式:「特定課税仕入れ」があった場合に用いられる消費税の申告方法。サービスの受け手である国内事業者が、その取引にかかる消費税を「預かったもの」と「支払ったもの」として両方計上して納税額を計算します。

インボイス制度導入で民泊ホストが受ける影響とは?

2023年10月から始まったインボイス制度は、民泊運営にも影響があります。特に注意すべきは、法人契約のゲストからインボイス(適格請求書)の発行を求められる可能性がある点です。

ビジネス利用のゲストを中心に受け入れている場合は、課税事業者としてインボイスを発行できるメリットがあります。一方で、消費税の申告・納税といった事務負担も増えるため、メリットとデメリットを比較して判断することが大切です。

課税事業者になった場合の申告と納税の流れ

課税事業者となるのは、年間課税売上高が1,000万円を超えた場合や、インボイス登録を選んだときです。その時点からは毎年、消費税の申告と納税が必要になります。

消費税の計算方法には「原則課税」と「簡易課税」の2種類があります。原則課税は、ゲストから受け取った消費税から経費支払いに含まれる消費税を差し引いて計算する方法です。

一方、簡易課税は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選べる制度で、業種ごとの「みなし仕入率」を使って計算を簡単にできます。この制度を使うには、課税期間が始まる前日までに「簡易課税制度選択届出書」を税務署へ提出しておく必要があります。

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知らないと損!民泊経営で使える5つの節税テクニック

節税

節税対策の王道「青色申告」で最大65万円の控除を受けよう

民泊を事業として本格的に運営するなら、青色申告は必須です。上記の通り、複式簿記で記帳し、電子申告をおこなえば最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。

また、青色申告であれば、赤字が出ても純損失の繰越控除を利用すれば将来の黒字と相殺できます。初期投資が膨らみがちな民泊運営でも、資金繰りを安定させやすい点がメリットです。

青色申告の導入から申告までの流れは次のとおりです。

  • 税務署に「青色申告承認申請書」を提出する
  • 会計ソフトを導入して初期設定をおこなう
  • 月ごとに取引を記帳して帳簿を整える
  • 確定申告期に青色申告書を提出する

日々の管理が手間かもしれませんが、会計ソフトを活用すれば効率的に管理できます。長期的には節税効果に加えて、経営状況を把握しやすくなるという二重のメリットを得られるでしょう。

家族への給与を経費にする「専従者給与」

青色申告には、一定要件を満たす家族への給与を全額経費にできる「専従者給与」の特例があります。適用条件は「事前の届出をしていること」「6か月以上専従していること」「労務に見合った金額であること」です。

白色申告にも「事業専従者控除」がありますが、配偶者で86万円、その他の親族で50万円が上限です。そのため、青色申告のほうが、節税効果は大きくなります。

経費の計上漏れを防ぐための管理術

節税の基本は、事業に必要な支出を必要経費として計上することです。そのためには、日々の管理を徹底しておく必要があります。

まず、領収書は月ごと・費目ごとに整理し、感熱紙は画像で保存します。事業専用の口座やカードを用意すれば、私的支出との区別が明確になるでしょう。

また、OTAの売上は手数料を差し引く前の総額で計上し、手数料は別途経費として処理するのが正しい方法です。

日常的な管理を徹底するために、次のような月次チェックリストの活用をおすすめします。

  • 領収書のスキャン・整理
  • 稼働日数の変化に応じた按分比率の見直し
  • OTAの総額売上と実際の入金額の照合

こうした管理を継続すれば、申告時にあわてることなく、正確な所得を算出できるはずです。

将来の退職金作りにもなる「小規模企業共済」の活用

小規模企業共済は、「独立行政法人中小企業基盤整備機構」が運営する積立制度です。事業所得または不動産所得がある個人事業主が利用でき、掛金全額が所得控除の対象となります。節税しながら老後資金を準備できる点が、大きなメリットといえるでしょう。

法人化を検討するタイミングとは?

法人化を検討するタイミングは、課税所得が継続して800万〜900万円規模に達したときです。この水準になると、個人の超過累進課税よりも、法人課税(実効税率30%前後)のほうが税負担を抑えられる可能性が高くなります。

法人化には税率優遇、経費範囲拡大、社会的信用向上などのメリットがある一方、設立費用、法人住民税、社会保険料負担などのコストも発生します。社会保険や均等割など総負担で試算してください。

初めてでも安心!民泊の確定申告・納税のやり方と注意点

確定申告

確定申告書に記載する項目と必要書類

確定申告とは、1年間の所得を集計し、それに応じた税額を計算して国に報告・納付する手続きです。まずは、申告に必要な書類を集めることから始めます。

民泊運営の確定申告では、まず収入を証明する資料が必要です。「Airbnb」などの民泊プラットフォームから発行される支払調書や、銀行口座の入金明細がこれにあたります。

一方、経費を証明する資料としては、物件の賃貸借契約書、固定資産税の納税通知書、水道光熱費や通信費の請求書、消耗品の領収書などをそろえておきましょう。

民泊の確定申告・納税の5ステップ

確定申告は流れを押さえておけば難しくありません。以下の5つのステップで進めると、期限前に慌てることなく対応できます。

1.収入・経費を整理する

1月1日〜12月31日の期間に得た宿泊料金や清掃費用などを収入としてまとめ、物件の賃料や光熱費、OTA手数料などを経費として整理します。建物や家具のような高額資産は、耐用年数に応じて少しずつ経費にする(減価償却)ことも必要です。

2.所得区分を判定する

事業所得・不動産所得・雑所得のいずれかを選定します。区分によって青色申告の可否や損益通算の扱いが変わるため、慎重な判断が必要です。

3.決算書を作成する

青色申告の場合は「青色申告決算書」、白色申告の場合は「収支内訳書」を作成します。

4.申告書を作成・提出する

所得控除や税額控除を反映し、翌年2月16日〜3月15日の間に提出します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や会計ソフトを利用すると効率的です。

5.税金を納付する

所得税は期限内に納付または口座振替で支払い、住民税は6月頃に届く納税通知書に従って納付します。

民泊事業者が陥りやすい申告ミスと対策

民泊の確定申告では、次のようなミスがよく見られます。

  • 所得区分を誤る
  • 過少計上する
  • 計上し忘れる
  • 家事按分の根拠を残さない
  • 書類を適切に保存しない

いずれも申告内容の信頼性を損なう要因です。あらかじめ注意点を理解し、必要な書類や根拠を整理しておきましょう。

税務調査への備えと帳簿管理の重要性

税務調査と聞くと不安を感じる方も多いですが、正しい帳簿管理を続けていれば過度に恐れる必要はありません。むしろ、日々の取引を丁寧に記録しておくことが最大の防御策となります。

具体的には、現金出納をその日のうちに記帳し、領収書や請求書を整理しておくことが基本です。こうした習慣があれば、万一税務調査があっても冷静に対応できるでしょう。

まとめ

民泊の税務対策は、まず所得税住民税個人事業税固定資産税宿泊税という5つの税の仕組みを理解することから始まります。そのうえで、自分の所得区分を正しく判断し、青色申告や専従者給与といった基本的な節税策を取り入れることが大切です。

日々の記帳や証憑の保存を習慣にすれば、確定申告で慌てることなく、賢く税負担を抑えられます。税金に関する不安を解消し、健全な運営体制を整えることが、安定した民泊経営への第一歩となるでしょう。

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