「私の民泊物件は宿泊税の対象なの?」
「いくら徴収して、どうやって納めればいいの?」
2025年12月現在、全国各地で宿泊税の導入や税額の引き上げが相次いでいます。特に2025年は大阪府での税額改定や、東京都での制度見直し案の公表など、民泊オーナーを取り巻く税制環境は大きく変化しました。
宿泊税は対応を誤ると、「徴収漏れによる自腹納付」や「ゲストとの料金トラブル」に直結します。
この記事では、複雑な自治体ごとのルールを整理し、今すぐ確認すべき「導入地域の概要」から「インボイス対応の領収書作成」「eLTAX(エルタックス)での申告・納税」まで、民泊運営の実務に必要な情報を一気通貫で解説します。
そもそも宿泊税とは? 民泊も対象になる理由

宿泊税の仕組み(誰が払う?誰が納める?)
宿泊税は、自治体が観光振興を目的に独自に定める「地方税」です。
納税義務者(払う人): 宿泊するゲスト
特別徴収義務者(預かって納める人): 宿泊施設(ホテル・旅館・民泊)の事業者
つまり、民泊オーナーは「ゲストから税金を預かり、自治体に代わって納付する立場」にあります。これは、給与から所得税を天引きする「源泉徴収」の仕組みに近いイメージです。
「民泊」は課税対象?
結論:多くの自治体で民泊も課税対象ですが、例外もあります。
近年の宿泊税条例では、旅館業法上のホテル・旅館だけでなく、
旅館業法の簡易宿所
住宅宿泊事業法にもとづく「届出住宅」(いわゆる新法民泊)
特区民泊(国家戦略特別区域法にもとづく認定施設)
などを明確に課税対象としているケースが多数です。
一方で、東京都のように、現行制度では「旅館業法上のホテル・旅館のみ」を対象とし、簡易宿所や住宅宿泊事業は対象外としている自治体もあります。
【2025年12月時点】宿泊税がかかる地域・金額一覧

ここでは、代表的な導入自治体の情報を整理します。いずれも「宿泊者1人1泊あたり」の税額が基本です。
東京都(現状と今後の動き)
東京都の宿泊税は、都内の「ホテル・旅館」に宿泊する場合のみ課税されます(旅館業法上のホテル・旅館)。簡易宿所営業や住宅宿泊事業の場合、現行制度では宿泊税の対象外です。
現在は、以下のような定額制が採用されています。
| 宿泊料金(税抜) | 税額 |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上 ~ 1万5千円未満 | 100円 |
| 1万5千円以上 | 200円 |
- 注意点: 食事代などは含みませんが、宿泊代に対するサービス料は含んで判定します
東京都では、インバウンド回復等を踏まえ、将来的に「定率制(例:3%課税)」や対象施設の拡大(民泊を含める案)を含む制度見直しが検討されています。
ただし 2025年12月時点では、まだ現行制度からの変更は施行されていません。
(参照:東京都主税局 宿泊税)
大阪府(2025年9月 税率改定済み)
大阪府では 2025年9月1日宿泊分から、税率区分と免税点が見直し されています。
それ以前は「7,000円未満が非課税」「100〜300円」の区分でしたが、2025年の改正で免税点が5,000円まで引き下げられ、税額も引き上げられました。
2025年9月1日以降の税率
| 宿泊料金(税抜) | 税額 |
|---|---|
| 5,000円未満 | 非課税 |
| 5,000円以上 ~ 1万5千円未満 | 200円 |
| 1万5千円以上 ~ 2万円未満 | 400円 |
| 2万円以上 | 500円 |
また、大阪府では条例・Q&Aで、「宿泊料金」に含めて判定すべき項目 を明示しています。
対象に含まれる:
宿泊料金(素泊まり)
宿泊料金に係るサービス料
チェックアウト時に必ず徴収する清掃料金など
対象に含まれない:
宿泊者の任意で利用する飲食代、駐車場代、アクティビティ料金 など
清掃費を「必須の料金」として設定している民泊では、宿泊税の判定額に清掃費を含めるのが通例です。
(参照:大阪府 大阪府の宿泊税)
京都市(全額課税)
京都市の特徴は、現行制度では「非課税枠がない」 ことです。どんなに安い宿泊でも課税されます。
現在の税額(2026年2月末宿泊分まで)
| 宿泊料金(税抜) | 税額(現行) |
|---|---|
| 2万円未満 | 200円 |
| 2万円以上 ~ 5万円未満 | 500円 |
| 5万円以上 | 1,000円 |
京都市ではすでに条例改正が行われており、2026年3月1日宿泊分からは税率区分や免税点を見直した新しい制度に移行することが決まっています。
(宿泊料金6,000円未満を免税とするなど、宿泊料金帯に応じて区分が細分化される予定)
記事執筆時点(2025年12月)では、上記の「現行税率」が適用されていますが、将来の予約を受ける際は、宿泊日ベースでどの税率が適用されるかを必ず確認してください。
(参照:京都市情報館 宿泊税に関するよくある質問)
金沢市(民泊も明記)
金沢市では、旅館業の施設に加え、住宅宿泊事業(民泊新法)に基づく届出住宅も宿泊税の対象と明記されています。
2024年10月の改正により、以下のように「5,000円の免税点」が設けられました。
| 宿泊料金(税抜) | 税額 |
|---|---|
| 5,000円未満 | 非課税 |
| 5,000円以上 ~ 2万円未満 | 200円 |
| 2万円以上 | 500円 |
(参照: 金沢市 宿泊税)
福岡県・福岡市(二重構造に注意)
福岡県では、県税としての宿泊税と、福岡市・北九州市などの市税としての宿泊税が「上乗せ」される二重構造になっています。
福岡市内の施設
2万円未満 … 合計200円(市税150円 + 県税50円)
2万円以上 … 合計500円(市税450円 + 県税50円)
北九州市・その他福岡県内(市の宿泊税なし)
一律200円(県税50円 + 市町村税150円など、エリアにより構成は異なる)
福岡市などでも、旅館業法の施設だけでなく、特区民泊・住宅宿泊事業も課税対象として整理されています。
(参照:福岡県庁 宿泊税の概要について)
北海道
北海道では、今後数年間で制度が大きく動く見込みです。
ニセコ町・倶知安町など一部エリア
すでに独自の宿泊税を導入済み。- 北海道全域(道税)
北海道としての宿泊税(道税)を2026年4月1日から導入する条例が可決・公布されており、札幌市や旭川市など主要都市も「道税に上乗せする市税」の導入を検討しています。
このように、北海道エリアは「道税+市町村税」の二重構造になる可能性が高く、将来の税率・区分は変動要素が大きいため、ニセコ・倶知安エリアで宿泊施設を運営する場合は、必ず道・市町村それぞれの最新情報を確認しましょう。
北海道で今後宿泊税が開始される地域【一覧】
- 札幌市(2026年4月1日開始)
- 留寿都村(2026年4月1日開始)
- 洞爺湖町(2026年4月1日開始予定)
- 小樽市(2026年4月1日開始)
- 函館市(2026年4月1日開始)
- 旭川市(2026年4月1日開始)
- 富良野市(2026年4月1日開始)
- 占冠村(2026年4月1日開始)
- 釧路市(2026年4月1日開始)
- 帯広市(2026年4月1日開始)
- 北見市(2026年4月1日開始)
- 網走市(2026年4月1日開始)
- 音更町(2026年4月1日開始)
- 新得町(2026年4月1日開始)
- 小清水町(検討中)
ほかの自治体の状況
導入済み自治体
- 愛知県常滑市(2025年1月6日開始済み)
- 静岡県熱海市(2025年4月1日開始済み)
- 青森県弘前市(2025年12月1日開始済み)
- 岐阜県高山市(2025年10月1日開始済み)
- 岐阜県下呂市(2025年10月1日開始済み)
- 島根県松江市(2025年12月1日開始済み)
- 長崎県長崎市(2023年4月1日開始済み)
導入予定の自治体
実務対応|予約・徴収・インボイスの完全ガイド

民泊オーナーが実際に行うべき実務を3ステップで解説します。
STEP1:予約サイト(OTA)の設定と徴収
ゲストから宿泊税をどのように徴収するかは、事前に運用方針を決め、予約サイト・自社サイトの表記に反映しておくことが重要です。
Airbnbなどの「自動徴収」を利用する
一部の地域では、Airbnb が宿泊税を代行して徴収・納付(Pass-Through Tax)してくれる場合があります。
管理画面の「税金」セクションで、対象地域と、自動徴収される税種・税率を必ず確認してください。
宿泊料金に上乗せして事前決済する
「宿泊料金+宿泊税」をまとめて事前決済する方法です。
メリット:
チェックイン・チェックアウト時の現金授受が不要
完全無人運営でも対応しやすい
デメリット:
OTAによっては、宿泊税部分にも予約手数料(ホスト手数料)がかかる場合がある
会計上は「預り金」として区分計上が必要
現地決済(現金・PayPay等)
チェックイン時またはチェックアウト時に、現金やQRコード決済で別途徴収する方法です。会計上は、「宿泊税=預り金」として処理しやすくなります。
一方で、無人運営の民泊では、集金箱の使用やQR決済リンクの事前送付、事後の振込依頼など、運用の工夫が必要です。
STEP2:料金表示とインボイス(領収書)の書き方
ここが最重要ポイントです。
宿泊税は消費税の課税対象外(不課税取引)なので、インボイスの記載を誤ると、消費税計算がズレてしまいます。
インボイス対応領収書の記載例
適格請求書(インボイス)を発行する際、宿泊税は消費税10%の計算に含めません。
① 宿泊料金:10,000円(内、消費税 909円)
② 宿泊税(非課税・預り金):200円
ご請求合計:10,200円
宿泊代合計:11,000円(内、消費税1,000円)
※この書き方だと、宿泊税まで含めて消費税10%を計算しているように見えてしまい、課税関係が不正確になります。
宿泊税は、「地方税」「預かり金」「消費税対象外」であることがわかるように、行を分けたり、「宿泊税は地方税のため消費税対象外」という但し書きを入れたりすると、ゲスト・税務署双方にとって親切です。
STEP3:申告と納税(eLTAXの活用)
宿泊税の申告・納付サイクルは自治体ごとに異なりますが、「毎月末締め・翌月末納付」 のパターンが多く採用されています(例:東京都・大阪府・金沢市など)。
現在は、地方税共通の電子申告システムである eLTAX(エルタックス) を使って、宿泊税の申告・納付ができる自治体が増えています。
メリット: わざわざ銀行や役所に行かなくて済む。複数物件を管理しやすい。
準備: 利用者IDの取得と、対象自治体への「利用届出」が必要です。
なお、京都市など一部自治体では「電子申告のみ可(電子納付は別途)」といった運用もあるため、「電子申告+金融機関窓口納付」まで可能なのか、それとも「電子申告+電子納付」まで可能なのかを、必ず自治体ごとの案内で確認してください。
宿泊税関連のよくある質問(Q&A)

民泊運営の現場で迷いやすいポイントを回答します。
Q. 清掃費やリネン代は「宿泊料金」に含まれますか?
A. 「必ず支払う料金」かどうかで判断されるケースが多いです。
ゲストが選べず必ず支払う清掃費は、大阪府では「宿泊料金の一部」と明示されており、課税対象額の判定に含める必要があります。一方、朝食代やオプションサービスなど、ゲストが任意で選択する料金は、宿泊税の判定額に含めないのが一般的です。
ただし、この扱いは自治体ごとに細かい違いがあるため、必ず自治体に確認してください。
Q. 宿泊税の徴収を忘れたらどうなりますか?
A. 原則として、オーナーが自腹で納付する義務があります。
ゲストから宿泊税を受け取っていない場合でも、宿泊実績がある限り、条例上の納税義務は消えません。
後からゲストに別途請求するのはトラブルの元なので、予約確定メール、チェックイン案内、宿泊約款・ハウスルールなどで、宿泊税の金額・徴収方法を事前に明記しておくこと が重要です。
Q. 会計ソフトでの仕訳はどうすればいい?
A. 「売上」ではなく「預り金」で処理します。
宿泊税はあなたの売上ではありません。
(受け取ったとき)
借方:現金(または普通預金) 10,200円
貸方:売上 10,000円
貸方:預り金(宿泊税) 200円
(自治体へ納付したとき)
借方:預り金(宿泊税) 7,000円
貸方:現金(または普通預金) 7,000円
このように処理することで、宿泊税が誤って売上に含まれてしまい、消費税や所得税を余分に払ってしまうリスクを避けられます。
まとめ|最新情報の収集が収益を守る
宿泊税のルールは、2025年から2026年にかけて大きく動いている過渡期にあります。民泊オーナーとしては、以下の点を抑えておきましょう。
物件がある自治体の最新条例・Q&Aをチェックする。
予約サイトの料金設定と記載文言を見直す。
インボイス領収書のフォーマットを「税別表記+宿泊税がわかる」形にする。
この3つを徹底することで、ゲストからの信頼を得つつ、健全な民泊運営を続けることができます。
※本記事は2025年12月時点の情報を基に作成しています。条例は改正されることがあるため、必ず各自治体の公式ウェブサイトで最新情報をご確認ください。
