民泊事業を始めるには許可が必要?知っておくべき法律や申請の流れをわかりやすく解説

空き家を有効活用したり、地域活性化に貢献したりとさまざまなメリットがある「民泊事業」。しかし、必要な手続きを踏まずに無許可で民泊運営を行うと、法律で罰せられる可能性があります。

そこで本記事では、これから民泊運営を始めてみたい!という人が知っておくべき法律や、許可の取得手順を具体的かつわかりやすく解説しています。ぜひ最後までチェックしてください。

 

 

民泊とは

民泊の定義と概要

民泊は、旅行者に”空いている物件を宿泊サービスとして提供する”ことで収入を得る営利事業です。ちなみに、法令上の明確な定義はありません。

これから民泊事業を始めるなら、まず知っておくべき法律が「旅館業法」です。有償で繰り返し宿泊所を提供する民泊サービスは、基本的に「旅館業法」に基づく許可が必要になります。

その旅館業法ですが、昨今の民泊ニーズに対応できなくなった背景があり、平成29年6月に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」という新たな法律が成立。これにより住宅宿泊事業者の「届出」の提出で民泊営業が行えるようになりました。

しかしながら、適用される法令は営業形態によって異なります。以下では、「どのように許可を得るのか」「どこに申請すればよいか」について詳しくみていきます。

 

民泊の主な4形態(種類)

民泊の営業形態は、適用される法令により、4つに分類されます。

  1. 旅館業法の簡易宿所
  2. 民泊新法
  3. 特区民泊
  4. イベント民泊

宿泊にまつわる法律のベースは、「旅館業法」です。そもそもはホテルや旅館のための法律ですが、民泊においては要件が厳しいため、ハードルが下げられました。

民泊に対応する法令と業態は、下記のとおりです。

 

1. 旅館業法の簡易宿所(365日営業)

民泊の申請では、旅館業法の中の「簡易宿所」として申し込むのが、最も多くなっています。簡易宿所としての許可が下りると、年365日間営業することができます。

 

2. 民泊新法(180日営業以内)

「住宅宿泊事業法」は別名、民泊新法と呼ばれています。この新しい法律は、近隣住民とのトラブルや、安全衛生の問題をくいとめ、安全で安心できる民泊を営むことを目的として成立しました。営業は年間180日以内と定められています。

 

3. 特区民泊(365日営業)

国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業、略して「特区民泊」と呼ばれています。外国から来たゲストに宿泊施設の選択肢を多く提供し、日本の観光業を盛り上げることにあります。対象となる地域は、指定を受けること、政令や条例を制定することなど、いくつかの条件をクリアした自治体のみとなっています。

特区民泊の場合、最低でも「2泊3日以上」という宿泊日数の規制が設けられています。これは、特区民泊は外国人旅行客の長期滞在によって、経済的な効果を図るためです。

 

4. イベント民泊(2〜3日営業以内)

規模の大きなイベント(スポーツの大会、祭り、コンサート、花火大会など)が開催されると、宿泊施設が足りないといった問題が起きます。こうした不足を解消するための民泊のかたちを、イベント民泊と呼びます。手続きとしては開催地域の自治体に届出をおこないます。

 

民泊に関わる法律(要件)

民泊にかかわる法律は、どのような業態で運営するかによって変わりますので、それぞれの法律を理解し、営業の条件を満たした上で、民泊事業を行うことが求められます。

また、違法な民泊の営業は、当然ながら罰則の対象となります。事業として成り立たせるためにも、適切な手続きを踏み、法令を遵守するよう進めていく必要があります。

以下に、民泊に関わる法律・政令の説明とポイントを紹介します。

 

1. 旅館業法

旅館業法(簡易宿泊所営業) 旅館業法における「旅館業」の定義は、有料で人を宿泊させる営業となっています。旅館業を営むには、必ず営業許可を受けねばなりません

旅館業法には、

  • 旅館・ホテル営業
  • 簡易宿泊所営業
  • 下宿営業

の分類があり、「民泊営業」のカテゴリーはありません。
ここでは、①②いずれかで営業許可を受けることになりますが、ほとんどは「②簡易宿泊所営業」としての許可を受けています。

 

2. 国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例

特区民泊は、「国家戦略特別区域法」実施に基づいた営業形態で行う民泊サービスです。この法律は、国際競争力を高めるために、国が「国家戦略特区として指定した自治体」の規制を見直したものです。見直された規制のひとつに「特区民泊」があります。都道府県の認定を受けることにより、「旅館業法」の適用から外れることになりました。特区民泊は、認定を受けた地域でのみ営業できることになっています。

 

3. 住宅宿泊事業法(民泊新法)

住宅宿泊事業法は、健全な民泊サービスを図るために新たに制定された法律で、通称「民泊新法」と呼ばれます。

民泊新法の定義は、

旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外の者が、宿泊料を受けて、住宅に人を宿泊させる事業

となっています。

また、措置として「1年間で宿泊させる日数が180日を超えない事業」と明示されています。

 

4. 民泊の建築基準法

民泊を始めるにあたり、業態や建物によって「建築基準法」が関わる場合があります。

役所への確認申請

民泊として提供する部分(床面積)の合計が200㎡以下であれば、原則として「確認申請」は不要。
※独自の基準を設けている自治体があるので、必ず窓口で確認しましょう。

 

建物の用途変更が必要なのは、どんなとき?

  • もともとの建物用途が「ホテル又は旅館」でなく、用途を「特殊建築物」に変更する場合
  • 用途変更部分の床面積が200㎡を超える場合
    ※2019年の法改正で「100㎡を超える」→「200㎡超える」へ変更になりました。

さらに、大阪市など「特区民泊」が可能な自治体では、独自の建築基準が定められていることもあり、注意が必要です。

 

許可なし営業の罰則

民泊を始めるためには、届出や申請といった手続きが必須です。無許可・無認可で営業した場合は、法律違反となりペナルティーを負うことになります。また、「旅館業法の簡易宿泊所営業の許可申請」と「民泊新法での届出」の違いに理解のないまま営業を始めた場合も、法律違反となるおそれがあるため、正しく認識することが大切です。

 

民泊を始めるにあたって必要な資格はある?

これから民泊を始める方にとって有用な資格に「民泊適正管理主任者」があります。民泊運営の疑問に応え、トラブルを未然に防ぐ役割を果たします。法令や条例を理解し、民泊の企画・運営・管理の面からアドバイスのできる専門資格です。

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民泊許可申請の詳細

民泊を始めるためには、自治体や国への許可申請が必要です

申請の手続きは、どの法令に適用するかによって、以下のように分けられます。

  • 旅館業法→「許可申請」を行う
  • 特区民泊→認定されている地域で「許可申請」を行う
  • 民泊新法→「届出」を行う

民泊新法の申請は「届出」となるため、旅館業法や特区民泊のような「許可」「認定」といった手のかかる手続きありません。ただし、年間180日しか営業できないため、まずは旅館業法の簡易宿泊所の許可を取るのが一般的です。

 

必要な書類と手続き

民泊の「届出申請」の窓口は、各自治体の都道府県庁ですが、実際には「民泊制度ポータルサイト」で申請します。

また、旅館業の「許可申請」の窓口は、各自治体の保健所です。

申請を行うには、申請書・物件の図面・消防設備の設置状況など要件を満たしたことを証明する、以下の書類が必要です。

  • 履歴事項全部証明書
  • 敷地配置図
  • 求積図
  • 寸法入り平面図
  • 建物立面図(四方向)
  • 使用承諾書(必要に応じて)
  • 水質検査成績書(使用する水が水道水以外の場合)
  • 土地、建物登記簿
  • 消防法令適合通知書

詳しくは、「各自治体の窓口」または「依頼する業者」へご確認ください

 その他の申請許可

保健所から関係部署への照会中に、追加書類の提出を求められる場合もあります。

消防局防災設備など
下水処理センター排水設備など
都市計画課周囲との景観など

 

個人で民泊許可申請した場合の費用

住宅宿泊事業の「届出」は無料です。手続きは、「民泊制度ポータルサイト」の使用がおすすめです。また、簡易宿泊所として「許可申請」する場合は、申請費用や手数料が自治体によって金額は異なります。

 

申請の代行業者の利用

以上のように、民泊の許可を得るまでに必要な手続きには、いくつかの法令や関係各所が関わり、それなりの時間や労力がかかります。健全な民泊サービスのためとはいえ、個人が行うには、時間や諸事情から厳しい面もあります。その解決策のひとつが、行政書士や代行会社の支援を受ける方法です。提出書類の作成や、手続きを代行する専門家のサポートを受けると、とどこおりなく民泊サービスの営業を始められます。

 

 

民泊許可申請の流れ

物件探し

宿泊サービスを提供する部屋や施設のない場合は、物件探しからスタートします。民泊用の物件では、駅や空港への利便性、観光スポットの周辺といった立地条件が人気です。ただし、法令や規約により、営業を制限される場合があるため注意しましょう。立地については自治体の「都市計画法に基づいた用途地域による指定」、マンションを使用する場合は「管理規約による禁止事項」を調べます。

 

消防設備の申請手続き

物件の設備面においては、「消防法に基づく消防設備の設置の有無」を確認します。自動火災警報機などの設置がされていない場合は、設置する義務があります(業態や法令によって異なります)特に、建物が「特定一階段等防火対象物」に該当する場合は、かなり高額な消防設備費用を負担することになるため、物件には注意が必要です。

 

住宅宿泊管理業者との契約

家主不在型(宿泊者の滞在時に、民泊サービスの届出者が不在)の民泊を行う場合は、「住宅宿泊管理業者」に管理を委託する必要があります。
「住宅宿泊管理業者」は、提供者の代わりに、定期的な清掃、宿泊者の安全確保、問い合わせや苦情の対応といった業務を行います。これらの業務には、法律で定められている条件もあるため、管理上の義務となります。管理業者については、「 民泊制度ポータルサイト(国土交通省の公式サイト)」をつうじ、登録のある業者を一覧できます。契約する際は、内容をしっかりと確認した上で行うことが大切です。

 

保健所または管轄の都道府県庁へ届出を提出

「旅館業法の簡易宿泊所」として許可を得るには、「保健所」に申請を行います。
自治体によってやや異なるケースがありますが、一般的には以下の流れで行われます。

<申請の流れ>

  • 事前相談(申請する前に「都道府県の旅館業法担当窓口」にて相談)
  • 許可申請を行う(申請書、添付書類、手数料支払い)
  • 施設検査(保健所の立ち入り検査)
  • 許可取得(検査で基準を満たしていることが確認され、許可される)

 

内装や設備の準備

民泊のために必要な設備について、住宅宿泊事業法(民泊新法)では「当該住宅を生活の本拠として使用するのに必要な設備」としての設置が義務づけられています。具体的には、キッチン・トイレ・バスルーム・洗面設備といった4つの水回り設備が必要です。また、民泊新法に対応する「標識」を用意する必要もあります。届出住宅ごとに公衆の見やすい場所へ掲示するためのもので、種類により〇号様式と言った区別がされてます。また、宿泊者からの好評価を得られやすいポイントとして、清潔感のある内装とWi-Fiの設置があります。清掃やアメニティの手配など、必要であれば代行業者に依頼しましょう。

 

写真撮影と予約サイトへの登録

部屋の状態が分かりやすく、かつ魅力的な写真を撮影し、Airbnbなどの予約サイトに掲載します。画像は、予約を決める時の重要なアイテムのため、プロの撮影した完成度の高いものがおすすめです。物件のメリットを紹介するとともに、宿泊希望者の求める情報に不足がないか確認します。

 

民泊許可申請をスムーズに行うために

民泊を営業する許可を得るまでには、さまざまな手続きと、多くの書類を用意する必要があります。これらの手間の削減や、タイムパフォーマンスを考えるのであれば、行政書士のサポートを受けるといった選択もできます。スムーズに申請を進めることにより、「時間の余裕を持てる」「煩雑な連絡を減らせる」といったメリットとともに、民泊運営に集中できます。

行政書士にお願いする

行政書士は、法律に基づく申請手続きの専門家です。一般的には分かりづらい、書類の作成や行政機関への申請を、代行する業務を行います。民泊の届出申請をスムーズに進めるためには、行政書士にサポートを求めることをおすすめします。以下に、代行の費用について参考例を紹介します(自治体や状況により変わりますので、おおよその目安としてお考えください)。

民泊新法の場合:ポータルサイトからの届出申請

  • 住宅宿泊事業届出→約10〜20万円

特区民泊の場合(大田区・大阪市の例)

  • 大田区への申請費用→約32万円
  • 大阪市への申請→約27万円

簡易宿泊所の場合

  • 事前調査→約5万円
  • 新規開業費用→約30〜40万円

 

【旅館業法の場合】保健所へ事前確認

民泊サービスは基本として「旅館業」に当たるため、許可を得るには保健所の立ち入り検査が求められます。保健所は、実際に民泊の物件(施設)を検査し、基準に適合しているかの確認を行います。

保健所が重点的に確認するポイントは、

  • 「構造設備基準」を満たしていること水回り設備である
  • トイレ・洗面・入浴設備(衛生面を重視)

の2点です。各自治体により、細かな条例を設けている場合もあるため、窓口で相談し、しっかり準備を行った上で申請します。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。民泊の運営許可を得るには、法令の理解や複雑な手続きが必要です。本記事で紹介した手順を参考に、やるべきことを一つずつクリアしていくことで、安全で円滑な民泊運営が実現できるでしょう。